観光庁に勤務していた友人は10年ほど前、「日本の観光資源にままだまだ知られていないものも多く、開発には十分の余地がある。問題はそこに適切な(*1)宿泊施設がなく、交通手段にも十分な利便性がないことだ」と言っていた。その後高級ホテルも増え、新幹線の延伸などあり、諸条件は少しずつ改善している。
先週末、花火があったせいかもしれないが、熱海市街は混雑した。スーパーに大きな荷物を持った家族連れが、何組も来ていた。中には揚げ物売り場の店員さんに「キモノ、どこ?」と聞く人も。2階にカジュアル衣料品店があり店員はそう説明したが、たぶん目的は「キモノ」だったろう。
帰り道、普段は誰も入っていない老舗呉服店に若い女性客が殺到し、浴衣をあさっていた。こちらも聞こえてくるのは中国語(多分広東語)。マンションに近い小型スーパーでは、買い物客の8割くらいは外国人だった。

景気がいいと考えるべきか、オーバーツーリズムと言うべきか、悩みながら帰ってきた。ただ海外の例を見ると、こんな生易しいものではないことがわかる。中国では万里の長城に観光客が詰め掛け、半歩ずつしか進めない動画がUPされている。
「長城が、観光客の重みで崩れる!」
との悲鳴が上がっていた。観光産業がGDPの13%ほどにもなるスペインでは、市民の生活が圧迫されていると「観光客来るなデモ」が起きている(*2)。どんな問題かと言うと、
・民泊化のため大家が居住者を(賃料を上げて)追い出す
・外食や日用品も観光客価格になって高騰している
など。仕事がありなら住む場所を奪われ、ホームレスとなった人たちも少なくない。観光収入は一部の大企業、富裕層に流れ、庶民は虐げられるばかりということだ。
京都で「市バスに乗れない」という住民の怒りを知りましたが、それとはレベルの違う観光公害です。各国政府は観光客への規制を強化していると言いますから、ますます欧州は(僕らには)遠くなってしまいましたね。
*1:1泊100万円以上の高級施設を求める客もいる
*2:世界に押し寄せる「オーバーツーリズム」の津波...観光客数を「制限」する規制も、各国が続々採用|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)