経団連というと、会長の会見などはTVニュースにもなりそこばかりが目立つのだが、18人も副会長がいる。この18人、40ほどもある委員会をそれぞれ管掌しているほか、自らの信念に基づいた政策提言活動も可能だ。
会長の活動については経団連事務局スタッフが万全のサポートをするが、副会長は自社のスタッフを使って活動をすることになる。そういう意味で、会長より「とんがった何か」をすることもできる。今回公表された「スタートアップ(SU)躍進ビジョン」はそんな活動の賜物と思う。
スタートアップ躍進ビジョン 【概要】 (keidanren.or.jp)
米国や中国では、次々と新しいSUが生まれ、多くは倒れるのだがいくつかはユニコーン(評価額10億ドル以上で未上場)や、デカコーン(100億ドル以上)に成長する。一度倒れた起業家も、再度・再再度のチャレンジができる。それらに比べると、日本のSUは影が薄い。そこでこのビジョンでは5年後に、
・成功のレベルを10倍に(ユニコーン100社、デカコーン2社)
・起業数も10倍に(SUを10万社、SUへの年間投資額を10兆円)
を目標にした活動をするとある。
具体的には、
1)世界最高水準のSUフレンドリーな制度
2)世界で勝負するSUが続出
3)日本を世界有数のSU集積地に
4)大学を核としたSUエコシステム
5)人材の流動化、優秀人材をSUエコシステムへ
6)起業を楽しみ、身近に感じられる社会へ
7)SU振興を国の最重要課題に
するとある。経団連提言を見慣れた僕からすると、失礼ながら青臭い表現が目立つ。これは経験豊富な経団連スタッフの手になるものではなく、昨年就任した南場副会長(DeNA会長)のリーダシップで出来たに違いない。こういう新風が伝統ある組織には必要で、経団連が彼女を副会長にと熱望したのは「ただ女性が必要」だったからではない。
日本のベンチャー事情2019 - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)
先日別ブログで日本のベンチャー事情を著わした書を紹介した。この中には、DeNA出身の起業家や、南場副会長の名前は何度も出てきた。また2019年の時点でもSU従業員の平均年収は710万円で、一般企業より100万円以上高いとある。岸田政権の給与UP作戦は、既存企業を頼むよりSU量産の方が手っ取り早そうです。政府はこのビジョンを、真剣に受け取って欲しいですね。