Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

保護と活用のバランス(鉄道保安編)

 「DATA Driven Economy」の時代だから、データ活用の優劣が個人、企業、業界果ては国のレベルまで、将来の明暗を分ける要素になることは明白である。しかし個人情報の活用となると、それはプライバシー保護とのバランスの上で活用する目的や範囲を論ずる必要がある。

 

 ただ一般論として「保護と活用のバランス」と言っても、市民団体は保護に傾き産業界は利用を唱えるのが当たり前。具体的なケースに拠って議論すべきであろう。最近いろいろな業界で、具体的な利用法の試行が始まっていて、これはいい傾向だと思う。折に触れ、取り上げてみたい。今回は「鉄道保安に向けた実証」である。

 

【独自】駅の防犯対策、「顔認識カメラ」で登録者を検知…JR東が一部出所者も対象に : 社会 : ニュース : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

 

 要は鉄道の構内や重要施設の周りにある監視カメラで、顔認証技術を使った犯罪抑止・保安をしようということ。指名手配犯や(仮)出所者などの生体情報を登録しておき、監視カメラ映像から人物を特定、追跡するわけだ。

 

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 搭乗前に手荷物検査を行う航空機と違い、鉄道の乗車客すべての荷物を検査することは不可能だ。だから、先日小田急車内でナタを振り回したような犯行は防ぎにくい。そこでリスクのある人物を事前に特定して「アンティシペーション」するというのが、この実証実験の狙い。ある意味サイバー空間で議論されている「事前捜査」に近い考え方だ。

 

 ではリスクが高いと思われる人物はどの範囲なのかというのが、最大の争点。指名手配犯はいいとして、仮出所中の人までは許されよう。また刑期を終えて禊を済ませた人まで入れるのはどうかという議論だ。結局「出所者」は対象から外したらしい。もう一つの条件「不審な動き」というのもあいまいな定義、AIが不審と判断したら「その根拠を示せ」と言われるかもしれない。

 

 この記事にあるように、かつて自社に強盗に入った人物を特定して監視していたらGDPR違反に問われたスペインの企業もある。

 

 不特定多数の人が利用する鉄道などで、このような保安措置は必要だろう。あとはハイリスク人物の範囲をどうするべきか、広く議論してもらえればいいかなと思う。そうそう、先日共産党山添議員が「鉄道営業法違反」で送検されました。共産党公安警察監視対象だから、当然「対象内」ですよね。