Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

良い試みだが、観測気球かも(前編)

 もう20年以上前になるだろう、僕の所属する会社はあるエリアの電力会社さんにスマートメーターを売り込んでいた。直接関係はないビジネスだったのだが、メーターのデータ活用に話が及んで、お前も行ってこいということになった。当時僕は全社にまたがる新事業のプロモーションをしていて、データ活用事業構造改革(今でいうDX)の推奨者だったからだ。

 

 各戸に設置された電力メーターは、かつては検針員が巡ってデータ収集し、料金計算に使っていた。毎日/毎時に中央でデータを見ることができるようになるのがスマートメーター。電力会社にとっては、検針員関連のコストを削減できる。ただ設置・運用にもコストがかかることから、その損益分岐点の議論になっていたのだ。

 

    f:id:nicky-akira:20210831100554j:plain

 

 少しでもコストを下げたいお客様に対し、当社の営業は売価を維持するために他の付加価値を宣伝したい。そこで「データを売れないか」という話になって、僕が呼ばれたわけ。ざっと調査をしてみると、百貨店が「買いたい」と言ってきた。

 

・現在お歳暮、お盆などのシーズンにチラシを配るが一律の内容だ。

・できれば富裕層の多いエリアには「松」のチラシ、以下「竹」「梅」とチラシを分けたい。

・「松竹梅」エリアの判断基準に、スマートメーターのデータが活用できないか。

 

 というものだった。電力使用量は、おおむねその世帯の生活費に比例する。後にある銀行で、「公共料金収納時のデータで富裕層を特定し、そこに富裕層向け金融商品を売りに行かせた」という話も聞いた。この話は以後どうなったのかは分からない。エリア毎の電力使用量なら、なにもスマートメーターの精度が無くてもいいはずだし、本当にチラシを3種類も作るコストを百貨店がかけたのかどうかも知らない。

 

 このような昔話、なぜ今頃思い出したかと言うと、類似のビジネスモデル試行の話が記事になっていたから。

 

電力データで「狙う広告」 世帯を分析: 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 東京電力スマートメーターデータをある単位で「個人が特定できない統計情報」にまとめ、博報堂に売る。博報堂はエリアを絞って広告配信をする。広告配信を希望する企業としては、ターゲットを絞った分だけ広告の効率性が高まるという仕組みだ。

 

<続く>