先週末の日経新聞に「世界で株安、三重の懸念」との見出しが躍った。三重の意味は、
・米国の金融緩和縮小への動き
・半導体その他部品の供給力低下
・中国のデジタル産業等への規制強化
である。「COVID-19」感染拡大、特に「デルタ株」の襲来やアフガニスタン情勢などは、TVニュースでは頻繁に取り上げられても、世界経済(株式市場)には直接の影響は少ないようだ。
金融緩和はいつかはくる話だし、部品供給もいつかは解消されよう。だから中長期的な懸念としては「習大人のデジタル産業叩き」にあると思われる。物流・eコマースから金融領域に出てきたアリババグループ、SNSが政治的意味を持ち始めたテンセント、要人のものも含めて移動履歴情報を持ってしまった滴滴への、習大人の懸念もよくわかる。不良債権を抱えて近代化もできない既存(公営)金融業界も守る必要があるし、SNSで共産党批判が巻き起こっても困る。海外上場した中国企業のデータは、株主の名目で米国等が持っていくかもしれない。
だから規制をかけているのだが、それが株式市場には大きなマイナスの影響を与えている。今のような成長産業叩きを続ければ、中国経済の繁栄は衰退期を迎えるかもしれない。それでも共産党支配体制維持のため、あるいは民衆の格差に対する怨嗟の声に対応するためには、やむを得ないとの判断と思う。
これに対して著名な投資家ジョージ・ソロス氏が、「金の卵を産むガチョウを殺して、鄧小平氏の遺産を放棄している」と手厳しく非難した。
ジョージ・ソロス、中国・習近平の矛盾した経済政策を容赦なく批判…中国向け投資に影響も (biz-journal.jp)
ソロス氏がかねてから習政権の政策を批判してきたが、ついに鄧小平の名前まで出しての激しい非難に、市場は緊張したに違いない。ただ、これは以前から分かっていたこと。ではなぜ今ソロス氏が「世界市場における大国の責任を果たせ」と言わんばかりのメッセージを出したのか?
ひょっとするとソロス氏は「世界経済が本当に危ない!」と思ったのかもしれない。中国が国内(経済よりも政治的)事情によって今のような所業を続けるなら、大変な事態になりかねないとの判断があったとしたら・・・。