Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

Trusted Web白書(5/終)

 「Trusted Web」は、事実上「Surface Web」の上に構築される「顔の見えるインターネット」である。もちろん「顔」の全部が見えるわけではないのだが、取引に必要な部分(信用度等)は第三者評価付きで見えることになる。

 

 インターネット&ウェブのビジネスモデルは、一般消費者には手数料無料、会費を払うと特典が付くよというものが主体だった。通信コスト・設備(サーバー等)コストが非常に低くなり、ロングテール型のサービスが実現できた。不足分は広告料で賄えた。

 

 「Trusted Web」のビジネスモデルはこれとは違う。多分「DXによって事業構造転換を図る」に近いものになるだろう。白書もユースケースの検討として、対象をいくつか挙げている。

 

1)メディアコンテンツの流通

2)感染症下での移動時の検査結果等の証明

3)人材の資格等証明

4)自動車のライフサイクルにおける価値把握

 

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 #2を見て「顔認証機能付きメガネで、群衆の誰がワクチン接種済みかわかる」などというアプリがあればという冗談話を思い出した。まあ、そういうものを欲しがる人もいるだろう。#4については数年前に国交省の研究会でトライアルした「自動車情報の活用」に近い用途だ。その時は自工会の反対で進まなかったのだが、今なら出来るかもしれない。

 

日本に「Car Fax」があれば! - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com)

 

 僕が説明してくれた協議会事務局の人に出した注文は2点。

 

 産業界が広くこれを使うようにするには、まずいくつかの特定分野で成果を挙げること。例えば病院で診断書を貰って保険会社に持っていくケースで、診断書がデジタルで「Trust」付きで保険会社に送られるようになれば、非保険者は楽になるし処理も早くなる。診断書発行料も下げられるはずだ。しかし医師会は、既存ルールを盾に反対するだろう。推進するためには、規制緩和とセットになった「Trusted Web」でなくてはならない。

 

 もうひとつは政府が率先垂範、このスキームを使うことだ。「デジタル庁」が行政サービスのデジタル化のために、ベースレジストリ(基盤DB)を整備するという。例えばその流通で先行利用して、コスト削減効果などを訴えるべきだ。

 

 さて、意欲的な取組と言える「Trusted Web白書」、今後の展開に期待したいところです。