Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

品質信仰の闇(前編)

 三菱電機鉄道車両用部品の品質検査が偽装されていたことが発覚し、社長辞任ということになった。日本製造業は「世界一の品質」を売りに一時期世界を席巻し、現在でもいくつかの分野では存在感を示している。特にインフラ関連の基礎技術に関しては特筆すべきところがあり、これを活かして「質の高いインフラの輸出」で成長著しいアジアの国などにシェアを広げようと、霞ヶ関も旗を振ってきた。

 

 ところがその信頼を揺るがすような事件が近年多発、特に三菱電機では2018年以降検査や品質を巡る問題が生じ、今回で6回目だという。それも2016年から3年間子会社含めてグループ全体で品質を巡る点検をして、その結果見逃されてきたことというから事態は深刻だ。

 

(社説)三菱電機不正 「またか」では済まない:朝日新聞デジタル (asahi.com)

 

 本社や経営層からのガバナンスが末端まで行き届いていなかったことの証拠であり、今回の社長引責辞任はやむを得ないことだろう。それでも、辞任会見の場に同席した常務は「問題のあった空調装置は、58年間発煙・出火・落下等の事故を一度も起こしていない。法的な問題はないが、顧客との契約上の責任はある」と、偽装はしたが品質には問題はないと主張する。

 

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 この主張は実に内向き、自分たちが決めた品質基準で事故が起きていないから問題ないだろうということだ。品質には安全はもちろんだが安心も必要で、それには(鉄道でいうと一般利用者までの)信頼が求められるということを理解していない発言である。

 

 朝日新聞Digitalの社説は、大企業の姿勢を叩くのが中心だが、日経になると少しトーンが違う。企業内の「風通しの悪い」環境が、事件の原因だという。

 

三菱電機、異常な35年不正 品質におごり独善続く: 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 このような企業は、事業部門の独立性が高い。作っている(うーん、製造業1.0の世界だ!)製品が違うので、他の事業部門からは中身の見えないブラックボックスである。「ここおかしいんじゃないか」と指摘しても「これだから素人は困る。xxも知らないのか。文句を言うのは100年早いわ」と蹴り飛ばされてしまう。

 

 事業部門の強さ、製造現場の強さは、日本型製造業のいい面でもあるが、同時に問題点でもある。

 

<続く>