Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

Honkaku小説人気は歓迎だけれど

 中学時代にエラリー・クイーンヴァン・ダインにはまり、高校時代には本気でミステリー作家になろうと思っていた僕。結局理系に進むことになったのだが、ミステリーで鍛えた(?)論理学が使えるコンピュータ・サイエンス学科を経て、デジタル系の仕事を続けている。今でもミステリーは大好きで、読書の半分ほどはミステリー。勝手な書評など書き続けている。

 

新城彰の本棚 (hateblo.jp)

 

 そんな僕には意外で、かつ嬉しい記事があった。ミステリーの本家である欧米で、日本の「Honkaku小説」が売れているという。

 

横溝正史、江戸川乱歩...... 日本の本格推理小説、英米で静かなブーム | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)

 

 記事によると人気の理由は「ち密でチェスのよう」だから。確かに第二次世界大戦が終わるまで「敵性文学」として禁止されてきた本格推理作家たちは、終戦とともに溜まっていたものを一気に吐き出すように作品を発表し始めた。高木彬光のように勤めていた中島航空機が解散し失業したので作家に転じたミステリーマニアもいる。坂口安吾のような純文学者がミステリーを書くことも珍しくなかった。

 

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 彼らはクイーン、ヴァン・ダイン、クリスティ、カーなどの本格ミステリーの影響を受けていたから、当時の「ち密でチェスのよう」な作風をきちんと守った。模倣に近い作品もあって、江戸川乱歩などはスカーレットの「エンジェル家の殺人」に惚れ翻案小説「三角館の恐怖」として出版してしまったくらいだ。

 

 欧米でこのような「逆輸入もの」が人気となる理由は、本家たる欧米で本格ミステリーが廃れた(売れなくなった)ことだと思う。昨今のミステリーはこの記事にあるように、「予想外のひねりと思いがけない事実の暴露」が目立つものばかりだと僕も思う。そういえば、僕の本棚にはトム・クランシー以降の軍事スリラーが増える傾向にある。もう欧米には「フェアプレイを掲げるパズラー」はいないのかなと思うと寂しくなってくる。そう、W・L・デアンドリアも若くして亡くなってしまったし。

 

 日本では、島田荘司以降「21世紀本格」を追求する若手作家が大勢います。パズラーを書くのは結構しんどいので、それに挑戦する人たちにはエールを送りたいです。