Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

肩書だけじゃ困るよね

 アフガニスタンからの米軍撤兵が始まっているが、この国が治安を取り戻すのは絶望的だ。シリア情勢も膠着したまま、ミャンマーの内乱状態も治まりを見せない。そんな中、先進国の視点は南・東シナ海に集まり始めている。

 

 ある記事は「まるで太平洋戦争前夜」とのタイトルを付け、台湾などを巡って米中対立が激しくなっているこの地域に、英独仏が自国の軍隊を派遣する事態を伝えた。タイトルは少しセンセーショナルすぎる気もするが、中国包囲網の多国籍海軍のような雰囲気であることに違いはない。

 

 憲法9条の制約で国軍を持てない日本だが、<Global Firepower>の世界軍事力ランキングで米中露印に次ぐ5位の実力国。先月の日米首脳会談でも日米同盟の結束を確認して、米国との協調路線を明示している。ただ日本産業界としてみれば、中国は米国を抑えて最大の貿易相手国。お取引先はもちろん、委託先、子会社なども中国に存在している。製品使用、取引、連絡、IT連携などを通して日本企業の情報が、中国企業に流れそれが「国家情報法」で合法的(!)に共産党に渡るリスクは無視できない。

 

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 そんなリスクに対応するため、政府は主な企業に「経済安全保障担当役員」を置くよう求めるとの記事があった。

 

経済安保の担当役員設置、政府が主要企業に要請へ: 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 すでに民生技術と軍事技術の境目もほぼなくなった今、官民連携で日本の技術や産業を守りたいというもの。半導体・通信・IT・原子力などが例に挙がっているが、重要技術の流出防止や中国に過度に依存しない体制づくりを目指すという。重要分野を担う企業には組織横断でリスク管理をする役員を置くことを求めているが、当然この役員は企業内だけ見ていればいいものではない。

 

 同業他社の当該役員はもちろん、関係省庁の幹部、政界とも連携しなくてはいけない。サイバーセキュリティも当然その担当範囲に含まれるだろうが、その連携組織に係った経験からすると、情報連携が最も重要。「Need to Know」の人物に迅速・正確かつ他への漏洩のおそれなく安全に「Intelligence」が届く仕掛けが必要だ。

 

 政府には「経済安保担当役員」を肩書だけに終わらせないように、例えば「セキュリティ・クリアランス制度」の設定をお願いしたいと思います。