Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

国退民進vs.国進民退

 一時期行方不明だったアリババグループ創業者のジャック・マー氏、政府批判で「消された」のではとの観測もあったが、無事な姿を見せてくれた。政府対アリババのコンフリクトの直接原因は、配下のアントグループ上場を巡ってのこと。旧態依然の銀行群に対して、小さくないインパクトを与えるもので、当局は黙っていられなかったのだろう。それもアントグループに制約を加えることで、決着しそうだ。それはいいのだが、マー氏を始めとする「資本家」たちに、思わぬ逆風が吹いているとの記事があった。

 

なぜ今? 中国ネットで高まる資本主義批判:日経ビジネス電子版 (nikkei.com)

 

 ネット市民が「利己的な資本家」と企業経営者たちを、追求・揶揄・非難するようになっているというのだ。この記事は企業に酷使されて急死した従業員の例などを挙げているが、事実がSNSの力で何十倍ものインパクトを引き起こしているようにも見える。資本家が庶民を搾取していると感じる背景は、もちろん格差の目に見える拡大だ。記事は「それでも共産党は、民間大手を重用することはやめない」と結んでいるが、僕はもう少しウラがあると思う。

 

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 それはある中国問題の専門家から教えてもらった「中国共産党は大きな振り子、右派と左派の間を激しく揺れる」ということからだ。中国では、

 

右派:市場経済重視、国退民進

左派:国家統制重視、国進民退

 

 という思想がある。僕らの考える右派・左派とはちょっと違う。歴史的に見ても、

 

毛沢東時代、左派が優勢。紅衛兵が資本家を糾弾。

・鄧小平時代になり、右派が盛り返す。

・1989年の天安門事件で、左派が逆転。

・1992年鄧小平の「南巡講話」以降、江沢民は「社会主義市場経済」を推進。

・「世界の工場」として成長、カネを握った左派が国有企業を優遇。

 

 となっている。現在は大手企業中心の右派優勢に見えるが、習大人は統制を強めようとしているのも事実。これからは左派が強くなると、専門家は言う。習大人は若者たちに毛沢東思想を広め、紅衛兵の役割をさせようとしているのではないかと言うのが僕の疑惑。もしそうなら、共産党は大手企業の「資本家」たちを追放し、乗っ取ろうとしている可能性がある。その道具が、国家がコントロールできる独自のインターネット(SNS等)である。

 

 時代は明白に「国進民退」に入りましたね。これからも注視しておく必要があるでしょう。