Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

けったいなものが出来るには?

 日本には巨大IT(米国のGAFAとか中国のBAT)は存在せず、デジタル産業と言うとNTT・KDDIなどの通信キャリア(総務省管掌)か、NEC富士通などの電子機器メーカー(経産省管掌)の名前が上がるくらいだ。巨大ITに対抗できる日本の企業を育てるにはというのは、多くの業界人・政策関係者が悩むテーマだ。
 
 今回ある業界団体の会合で、ユニークな講演者がこのテーマの持論を述べたのを聞く機会があった。まだ若いこの講師、ある政府系(デジタル)独立行政法人で部門長をしている傍ら、大手キャリアや大学研究室にも籍を置き、自分の会社まで持っているというマルチタレント。企業活動もユニークで、昨年テレワークブームが起きた時に重要なツールを迅速に開発しただけでなく、無償提供をしたこともある。
 
 彼の問題意識は、日本には「デジタル技術の生産手段がなく、産業化されていない」という点にある。かつて鉄鋼・造船等で世界をリードした日本の産業界は、外国に学び独自の研究をし、生産手段を構築して産業化していった。デジタル産業はそういう苦労をしておらず、外国から入ってきたコンピュータを使うことにしか力を注がなかったというもの。彼が指摘したポイントは、
 

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・日本のICT産業には「事業型技術者」が非常に少ない
・事業型技術者にはルール等を自分で作らせ、自由度の高い仕事をさせるべき。
・しかし「けしからん」を連発するガバナンスおじさんが彼らをスポイルする。
・日本型組織は往々にして、ゼロリスクとカオスの両極端に振れる。その中間で絶妙なバランスをとれるならイノベーションを興せるかも。
 
 GAFAを始めとして今世界を席巻している巨大ITは、決まった方針の通りに成長したわけではない。面白そうだからやっていたら「けったいなもの」が出来てしまい、それを活かそうと考えて巨大になったのだと、彼は言う。
 
 彼自身は学生時代から自律的な環境を求め、迫害に逢いながらも生き延びてきた技術者で、いまやマルチタレントである。彼の主張は突飛に聞こえるが、真実を突いていると思う。イノベーションを興せる「事業型技術者」をどう発掘・育成するにはどうしたらいいか尋ねると、「経営者がそういう人材を重用するぞとのスタンスをみせること」との答えが返ってきた。
 
 社内で「けったいなことをしている人物」を探して大事にすること、これが企業経営者のすべきことなのでしょうね。