Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

祝!英欧間のFTA妥結

 先週末、久々の朗報だったのは英国と欧州の間でFTAが妥結したこと。もちろん両政府議会の承認がいるのだが、とにかく山は越えたと見ていいだろう。「Brexit」の背景に、英国のわがまま(ポンドをそのまま持っていたり、シェンゲン条約に入らなかったり)があり、ドイツなどが「原理主義的な規制」を掛けたりすることがあったことは、別ブログで複数の書籍を引用する形で紹介している。

 

 「COVID-19」の変異体が英国で発見されたこともあって、欧州各国は英国発着の航空便をキャンセルしたり、物流を止めたりしている。これはいずれ感染拡大が落ち着いて来れば解消されるとしても、FTAが期限の年末までに合意できなければもっとひどい物流停滞が起きていたかもしれない。

 

 まずは一安心と思いながらも、僕にはまだ懸念が残っている。それは欧州政府が進めようとしているデジタル改革に、英国が入れないのではないかということ。FTAにこの項目がどこまで入っているのか、疑問に思っているのだ。先日欧州事情に詳しい人に聞くと、欧州政府が定めた復興計画の柱は3本。

 

・Green Deal

・Digital Single Market

・Resilience

 

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 この「Digital Single Market」というのは、10年以上前から僕が注目してきた政策。最初に例示されたのは、アイルランドからポーランドにモノを送るのに、通貨や関税の問題は解決しているのに物流プロセスで4回データの書き換えが起きる。これを統合したいということだった。

 

 想定するに、アイルランドから英国のベルファストに陸送、船積みしてオランダのアムステルダムへ、そこからドイツを経由してワルシャワまで陸送のようなケースだろう。各国のデジタル体系(IDとかフォーマットとか・・・)が統一されていないから起きること。これを各国のシステムを標準化してつなげようという大胆な発想である。僕はこの構想が上手くいきそうなら、それをTPP領域で真似られないかと思っていた。

 

 まだ十分な効果は出ていないようだが、今回の「Brexit」はこの努力に水を差すものである。やはり域内では経済規模の大きい英国が入った「Single Market」であって欲しい。FTAに入っているのならいいのですが、そうでなければ英欧間でFTA拡大の交渉をしてくれませんかね?これって初夢に終わるのでしょうか?