Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

デジタル・デバイドを無くそう(前編)

 ずっと昔、ものづくりというものをやっていた時代の記憶によると、開発技術者は明らかにシーズ指向。とにかく自分のできること、やりたいことを製品に盛り込もうとする。彼に見えているのは製品が世に出るための1%の部分だけ、表通りの技術開発だ。一通りのものは出来上がるのだが、誤った使い方をされたときの対処とか、生産性への配慮、昨今で言えばサイバーセキュリティ機能などを付けないと完成品とは言えない。

 

 ここまで来るのに、表通り開発の9倍の力(人材の質・量)が必要だ。それでもまだゴールには10%の工程しか来ていない。それまでの9倍の力が、その製品を売るために必要だ。販売網を整備し、プロモーションを仕掛け、お客様対応窓口を設置しオペレータの教育をする・・・ここまでやってようやくそのモノは「商品」になる。

 

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 僕は主に特定用途向けの機器やソリューションを扱っていたからまだいいのだが、一般消費者向けとなると「商品」にする努力は本当に大変だ。正直、そういう業界から足を洗えた時はほっとした。そんな苦労を思い出させてくれる記事があった。

 

「PC誌元編集長もため息」お客をたらい回しにするパソコン業界の不親切 新品を買ってきてもすぐに使えない | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

 

 組織から独立したジャーナリストが自前のPCを購入して、新しい仕事をしようとしたときに遭遇した危機の数々を綴ったもの。初期設定がクラウド利用や昼間のみアクティブになっていた、OutLookGmailの相性が悪い等々、Microsoftのサポート窓口に何度電話をしたことかと嘆いている。

 

 企業にいた時はサポートチームがやってくれたことを、一人でしないといけないのは辛い。僕自身も今年テレワーク用のVAIOを買って、セットアップするのに半日かかった。前の機種を買って5年は経っていたので少々迷ったこともあるし、MicrosoftのTeamsがビデオ会議だけではなくいろんなところに顔を出すのに戸惑った。

 

 この記事が指摘するように、ハードウェア・ソフトウェア・サービス等々が「縦割り」で、顧客本位になっていないことは確かだ。しかし各供給元が全てを調整して、開発・販売をしているわけではない。その企業たちも、日本企業ばかりではないのだ。

 

<続く>