Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

医師法第21条

 NCIS「ネイビー犯罪捜査班」のビデオを見ていて、5人分のバラバラ腐乱死体が出てくるエピソードがあった。相当おぞましいシーンだったから、平気でウィスキーをなめながら観ている自分にびっくりした。さてそうなるとデビット・マッカラム扮するダッキー検視官が、助手のパーマー君と一緒に大活躍することになる。このシーズンの特典映像に、ダッキー検視官の裏話があった。役作りにあたっては、本物の監察医に"Man to Man"での指導を受けたという。

 

 先日別ブログ「新城彰の本棚」で、日本の有名な監察医上野先生の「法医学で何がわかるか」を紹介した。著者はその巻末で、監察医を志望する医師の少なさを危惧し、待遇・環境の改善を求めておられた。

 

https://nicky-akira.hateblo.jp/entry/2020/10/20/000000

 

 監察医の収入は一般公務員+αなので、私立病院の勤務医に比べれば少ない。加えて死体の検分の際に感染などの危険もある。そんなこともあって、監察医を志望する医学生は少ない。大学教育の過程でも、通常の授業に比べて法医学の授業は「息抜き」の時間と捉えている学生が多いとある。

 

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 しかし一般の医師でも、生涯で法医学の知識が求められるシーンはあり得る。それが「異常死」に遭遇する場合だ。医師法第21条では、医師が死体を検案して異常があると認めた時は、24時間以内に警察に届け出る義務があるとしている。問題は、どんなものが異常死なのかの定義があいまいだったこと。上野先生は隠れた犯罪を見逃さない立場から、条文を下記のように改正すべきだとおっしゃる。

 

 医師が経過を見ている(24時間以上)患者の病死以外の死亡は、変死として24時間以内に所轄警察署に届け出なくてはならない。

 

 ただこのように拡大されると、検視を行う警官、法医学知識の十分でない警察嘱託医の現状でさばききれるのか疑問が残る。現状を専門家に聞くと、1994年に法医学会が出した異常死ガイドラインなどで、診療関連死まで届け出が求められることになってしまったとのこと。結果として医療過誤が疑われるか微妙なケースにまで警察の介入が増え、医療現場の萎縮を招いているという。

 

 上野先生の主張には敬意を払いながら、現実問題として法医学に精通した人が少ない中で、できることには限界があるように思います。