Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

デジタル人材偏在の原因(後編)

 なぜ米国企業が「オープンシステム」を採用して、IBMに代表されるメインフレームからサーバーとPC主体のクライアント・サーバーに移行できたかについては、1980年代の米国事情を見てきた経営学者に話を聞いたことがある。

 

 この時代、日本経済は絶好調「レッド・サン」と呼ばれて、月のように衰退する米国産業を侵食していた。米国産業界は統合・改廃を迫られていて、そのネックになったのがメインフレームシステムだったと彼は言う。構築・運用にカネがかかるうえに、いざA部門とB部門を統合しようとするとシステムの相違でうまくいかない。

 

 何度か躓いた米国の経営層は、より安価で標準的なクライアント・サーバーシステムで全部を作り替えた方がトータルでは安いと気づいた。それならば自社内だけではなく、競合他社も巻き込んでシステム再構築するのがいい。なにしろ1年後にはその会社と合併しているかもしれないからだ。

 

 そこでデジタルリテラシーのある経営者は、自社内に業務もデジタルもわかるチームを置く必要に迫られ、社内IT部門を強化したわけだ。強化のためには、当然処遇しなくてはいけない。権限も与えるべきだし、キャリアパスも見せないといけない。デジタル人材の立場は強くなった。

 

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 ここが野口先生のいう「日本のデジタル人材偏在」問題の原因である。突き詰めれば日本の経営者の多くは、大企業であっても1980年代ころの経営スタイルに留まっているということ。野口先生に記事にもあるように、先代までの経団連会長は経団連会館でPCを使っていない。これを解消しようとするなら、成功への道は見えているので難しいことではない。

 

・社内のデジタル人材を強化できるような、処遇・権限・キャリアパスを構築

・これに予算等を加えて、CEOのリーダーシップで推進

・推進できない/する気のないCEOは、取締役会や株主がこれを取り換える

 

 民間企業では、このような「荒療治」をしても対外公表するには時間がかかり、他社の参考にはしづらいかもしれません。しかし政府となれば話は別、ぜひ菅内閣には剛腕を振るっていただき、霞ヶ関から自治体にいたるまで、これらの3項目を具体化できるようお願いしたいです。そうそう「政策に合わない官僚の異動」も含めてね。