Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

軍事技術としてのAI

 いまや尾張瀬戸の英雄となった将棋の新星藤井二冠は、AIを活用した新機軸を繰り出してベテラン棋士を圧倒しているという。囲碁の世界でも、「AI以後」という言葉があって、星にカカリを打たないで直接三々に打ち込む「ダイレクト三々」など新定跡が誕生している。ゲームの世界なら、微笑ましく「ほー!」と言っていればいいのだが、こと軍事となると微妙な話だ。

 

 F-16戦闘機ベースでのバーチャル空中戦が各社のAIが戦うトーナメントで行われ、勝ち残ったヘロンシステムズ社のAIは、ベテランパイロットとの闘いでも5-0で完勝したという。

 

https://wpb.shueisha.co.jp/news/politics/2020/09/01/111962/

 

 囲碁将棋の世界でも、血なまぐさい実戦の場でも、勝利の可能性を高めるのはデータの量だ。もちろん質もあるが、量が多ければそれをスクリニングすることで質を高めることもできる。ベテランパイロットは訓練の量や経験した空戦の数でより多くのデータを体得しているから強い。しかし所詮は生身の人間、蓄積できるデータ・活用できるデータの量には限りがある。しかしコンピューターの処理能力は飛躍的に向上し続け、事実上無限のデータを蓄積・活用できる。

 

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 だからいつかは、AIが最高レベルの人間を上回る時代が来るわけだ。加えて人間のパイロットはどこかで自分を守ろうとするが、AIは最悪体当たりで相討ちにしても相手を倒そうとすると記事にある。囲碁将棋の世界でもAIは攻撃時により強みを発揮するらしいが、何か共通点があるのかもしれない。記事にはないが、加えてAI戦闘機(戦闘自律ドローンというべきか?)のメリットは、

 

・人間関係の装備(座席・生命維持装置等)が必要なく軽量化できる。

・安全関係の装備(脱出装置等)も不要にできるか、削減可能。

 

 もあってより空戦には有利だ。しかしこうなるとほぼ戦闘ロボットと同じなので、通常議論されている「責任あるAI」や「AI倫理と説明責任」とは別の規制が必要なのではないか。候補となるのはアシモフの三原則(*)だが、これだと戦闘用には使えない。このあたりの議論、今後も注視していくべきでしょうね。

 

(*) 1)人間に危害を加えない、危険を看過して人間に危害を与えない。

  2)上記に反しない限り、人間の命令にしたがう。

  3)上記2項に反しない限り、自己を防衛する。