Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

公共交通のオープンデータ(3/終)

 僕が「シーズ視点ではなくニーズ視点で」と言ったのは、長年の信念である。若いころ「こんな技術がありますよ」と売り込んで、さんざん失敗した。お客様が何がしたいのかして欲しいのかを勉強し、仮説をぶつけて跳ね返され、それでも次の仮説を練っていく姿勢でないと「新事業」などできないと知ったからだ。

 

 だから公共交通オープンデータ協議会のこれまでの活動には敬意を払いながら、次のステップに行くべきだと言ったのだ。これに対して重鎮の先生は、「君の言っているのは理想論だ。あるべきことかもしれないが、時間がかかりすぎる。業界としてはすぐにも成果が必要なのだ」と消極的。中心人物の某教授は「理解するが、協議会としてはプラクティカルなことをでないと意味がない」と言った。

 

 僕は少し言葉を変えて「これまでは、交通事業者の努力で支えられてきた。もちろんそれは重要だが交通事業者のメリットがないと長続きしない。データを無償提供するだけでなく販売したり、他の業界のデータを交通事業者が受けて合理化や改善を図ることも考えるべきだ」と言った。受けるデータの例として、通信事業者が持っているスマホ等の位置情報、公共機関が持っている詳細な地形・気象情報などを挙げた。

 

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 すると、ある交通事業者から、

 

・「COVID-19」で状況が一変した。今は列車に乗ってくれとは言いづらい。

・昨年度の決算は赤字になった。今年度はもっとひどくなり、見通せない。

・収益につながり、合理化の助けとなることならなんでもやりたい。

・一方で災害対応はより一層の努力が必要、そのためにもデータは欲しい。

 

 と僕に賛同する意見が飛び出した。会合の後でその事業者さんと話し合ったのだが、東京都や霞ヶ関に言われると、中小の事業者も「No」とは言えないが、何らかのメリットが返ってこないと(準公的事業としても)続けられないという。

 

 僕はデータ活用の4条件を改めて説明し、「リアル社会を支えているインフラ事業こそDXを推進すべきだし、データを活用すべきだ。そのデータは自前の収集だけでは足りなくて、公的機関のほかにも電力会社のような他のインフラ事業者ともデータ交流が必要。そのためのデータの整理は、公共交通事業者が一歩先んじている」と励ました。

 

 時代は「DATA Driven Economy」になりつつあります。公共交通事業者さんの取り組みには、これからも注目していくつもりです。