内閣官房デジタル市場競争本部が出している「デジタル市場競争に係る中期展望レポート(案)」によると、デジタル市場の今後のリスクは、
・勝者総取りの懸念
・個人の判断すらコントロールされる懸念
・データの信頼性の欠如
・IoT進展に対応できないデータ処理とコスト
があるという。米国のように一握りの巨大企業(GAFA)が支配する形態も、中国のように国家が統制する監視社会の形態もよろしくないから「第三の道」を探したいとある。そこで必要とされるのが、
・多様な主体による競争
・信頼の基盤となる「データガバナンス」
・「Trust」をベースとしたデジタル市場の実現
だという。特に「データへのアクセスのコントロールを、それが本来帰属すべき個人・法人等が行い、データの活用から生じる価値をマネージできる仕組み(Trusted Web)を構築」するとした方向性が強調されている。
何度か紹介しているように、データは「無体」なので所有権は存在しない。盗んでも窃盗罪にはならない。その上、無限に同じものを作ることができる。法律上の権利は「本来帰属すべき個人・法人」には、有体物のように認められているわけではない。現行法では、
などを適宜組み合わせて犯罪を取り締まっているわけだ。上記の方向性にある「データの活用から生じる価値をマネージ」するためには、データそのものを財物とした法体系の議論がいると思う。これは長い論争になるだろう。そこで、方向性は分かったから何から手を付けるかと聞いた。すると、将来のデータガバナンス構造を描きながら、ユースケースを積み上げて信頼を得、グローバルに議論を展開するという答えが返ってきた。
僕も、ユースケースの積み上げは必要だと思っている。このデータをどう流通させて、誰がどういう目的で使って価値を生む(儲ける)かをひとつひとつ俎上に置き、社会的に容認できるかの議論をすべきと思っているからだ。内閣官房は「ガバナンス」の視点からユースケースを検証しようとし、僕はビジネスの視点から検証しようとしている違いはあるが、やろうとしていることは同じだ。
資料には当面1年間のアクションとして「官民の推進体制を立ち上げる」とある。想いは違ってもこれなら一緒にできそうですね。推進体制に期待しています。