何度かご紹介しているように、データ活用には4つの条件がある。僕がよく議論するのは国際会議の場で、
1)データに国境を越えてアクセスできること
2)フォーマットやIDが標準化されデータがすぐに使えること
3)データ活用で「儲かる」ビジネスモデルがあること
4)社会的コンセンサスが得られ、炎上しないこと
を主張し続けている。これは複数の機関が関わる話であれば、どんなケースにもそのまま適用できる。インフラメンテ用のデータも、関係機関のそこかしこにはデジタルで保管されているものがある。ただどの機関も自分のために蓄積したデータが多く、他の機関に提供するつもりで作っていない。
今回の国交省の資料には、「3地区におけるDB整備内容・連携体制」と題したページがあった。秋田・島根・長崎県の9自治体で、橋梁のデータを連携させる試行をやっているというのだ。類似事例の損傷状況を参照し、健全度判定等の維持管理業務などに活用していこうというもの。
地図上にデータが展開できていて、インフラの点検・補修データを蓄積し、防災・減災にも使おうとしている。面白い話だと思っていたら、会合の民間委員から質問が出た。この試行で何が問題となっているか、その解決のためにどうしたのかとの質問だった。恐らくこの3県9自治体のシステムを納入したベンダーも同じではないだろうし、データベースの設計だって同じとは思えない。
上記の4条件に当てはめてみると、
1)一般にこの種のデータは、他の自治体からアクセスすることは考えていない。
⇒ それを9自治体ではできるようにしたというのでOK
2)フォーマットやIDの標準化
⇒ 恐らくできていないし、最初に問題となるのはここ
3)経済合理性
⇒ 役に立つデータの見極めができるかにかかってくる
4)コンセンサス
⇒ 個人情報ではないので、大きな問題はなさそう
なので、2)と3)をどう進めるかがカギだ。電子自治体で悩んでいるのは各自治体の業務そのものが標準化されていないので、フォーマットやIDもバラバラであること。インフラメンテも、業務の標準化がどこまでできているかでハードルの高さは変わる。もっと難しいのが「役に立つデータ」、これが絞れないとデータ集めが目的化して大きな無駄を生む。ようやく緒に就いたインフラメンテのデータ活用、進捗を注視する必要があるでしょうね。