Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

自由都市香港の終わり

 遅れて開催された今年の「全人代」、中国の「国会」のようなものだが3,000人もの地域代表が並んで拍手をしているシーンは印象的だ。ここで決議された中に「国家安全法」というものがあって、物議を醸している。この法律の狙いは香港で「一国二制度」を骨抜きにできる内容だ。

 

 20世紀末の香港返還で香港は中国に戻るのだが、当面中国の法制を制限し自由都市としての活動をできることになっていた。しかしこれでは習大人が香港を支配できない。しばらく前から香港の自治を脅かし始め、デモなどの反発も招いたのだが今回決め手を放ったというわけだ。

 

 背景には、香港を通じて自由社会とのヒト・モノ・カネの流通をしてきた中国が、自国の経済が大きくなって香港という(異質の)窓口を以前ほど必要としなくなったことがあるだろう。旧宗主国である英国では、香港を脱出する人たちを受け入れると発表している。台湾も香港への支援を申し出ていて、その中には難民受け入れも入っている。

 

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 ここまで事態が急迫する前から、香港の株式や不動産を売りに出す動き(投げ売りともいう)はあって、中国資本が安く買っていた。ヒト・モノ・カネは、確実に香港から逃げ出しつつある。

 

 いや香港からだけではない、中国全体から自由社会のヒト・モノ・カネは逃げ出し始めている。トランプ先生は米国への工場回帰を勧めていて、各国にも大なり小なりその動きはある。これまでグローバリズムの進展で、世界で一番安いところで製造や調達をしていたのだが、これが逆回りをしはじめたというわけだ。

 

 米中対立という枠組みの中で、Huawei問題、5Gセキュリティ問題などが語られ、日欧などはどちらにつくのかというメディアもあった。しかしことここに至れば、日欧が中国につく選択肢はほぼなくなったと僕は思う。

 

https://nicky-akira.hatenablog.com/entry/2020/05/25/140000

 

 でご紹介したように、CSISが5Gサプライヤの評価基準を示した。評価のマイナス要素に、企業への協力強制・略奪的貿易慣行・非合理的インセンティブの恩恵などが挙げられているが、これらは中国政府・企業についての非難と思ってもいいだろう。

 

 かつての冷戦時代のように、2つの陣営が対峙する時代が来たようです。両陣営間の交流はどんどん少なくなっていくでしょう。