Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

システム開発「1:9の法則」

 ここ熱海市でもようやく「特別定額給付金」の申請書が届いた。マイナンバーカードや銀行通帳のコピーは用意してあったので、即日記入して返送した。個人名の横に「受け取らない」チェック欄があるのだが、ついチェックしそうになる。この「罠」には引っかからなかったぞ・・・と。

 

 仲間内にはオンライン申請でできたという人もいるのだが、マイナンバーカードのオンラインシステムは青色申告など税制関係での利用が中心で、慣れている人は少ない。普通の人にはあまりお勧めできない。また申請側でなく受理した側でも、紙に打ち出して整理するなど手間がかかりすぎる。何度でも同じ人が申請できてしまうという「不具合」もあって、市町村ではオンライン申請を打ち切ったところも多い。また「持続化給付金」の申請は「三密」を避けて原則オンラインとしたのはいいのだが、PCもスマホもないという悲鳴が申請側から上がっている。

 

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 これらの不具合の原因は、政府のTOPが急いで方針を決め発表したのを、うまく実現できなかったことにある。特にシステム設計期間がどれも短く十分な検討ができなかったのだろう。どのようなシステムも、表通りの機能は比較的簡単に実現できる。しかし思わぬ使い方をされた場合の対処、異常時の対応などを考えてシステム機能に盛り込み始めると大変な手間がかかるものだ。

 

 一般的には表通り機能にかけた労力を1とすると、異常系にかける労力は9くらいは必要だ。俗に「1:9の法則」という。異常系の中には、昨今必須となったサイバーセキュリティ対策(なりすましや外部からのデータ改ざん等への対処)を含む。

 

 例えば「特別定額給付金」申請システムなら、同じ人が再度申請したら「すでに受け付けています。更新しますか?」と聞いて、Yesなら受理して以前の申請を抹消する。Noなら拒否して終わり。関係者に聞くと「10名以上の家族は一度に申請できないから複数申請を認めた」というが、そんな家族は例外処理(多分郵送でやってねという)でいい。

 

 さらにシステムとしては異常系まで含めて出来上がったとしても、これを一般の人に使ってもらうには「90の力」が必要なこともある。そこまで考えるのがシステム設計の基本である。政治家が「xx申請、xxまでにできるか?」と問い、官僚が(表通りの機能ならという意味で)できると回答したのかもしれません。これも一種のデジタルリテラシーですよ。