Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

オンライン裁判・・・でもその前に(前編)

 「COVID-19」感染予防の意味で、いろいろな分野でオンライン化・リモート化の検討や実践が進んでいる。それ自体はいいことなのだが陥りやすい罠があることを、30余年のデジタル化(今でいうDX)トライアルの経験からアドバイスさせていただこう。

 

 リアル世界でやっていることをそのままサイバー空間に持ち込むのは、愚の骨頂だ。まず最初にやりたいこと(決済とか給付とか)があって、それを現金で、銀行窓口もしくは商業店舗で行うから、本人認証とか現金を数えるとか領収書を出すような業務が発生する。これをそのままサイバー空間に持ち込むよりは、まず決済なり給付なりでしなくてはいけないことは何か、の原点に立ち返るべきだ。

 

 その上でサイバー空間での本人認証や金額の確認、決済記録のやり方を決めればいい。そして全体設計に入っていくわけだ。本人認証はマイナンバーカードや各種書類にハンコを押したもののPDF/JPEGなどとすると、結局バックヤードで印刷をして手作業で突合、消込をする羽目になる。

 

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https://www.bbc.com/japanese/52749904

 

 先日シンガポールの裁判で「Zoomで死刑判決」というセンセーショナルな報道があった。明るい社会主義国家である同国、合理的なことはすぐやるので有名である。最近日本でも「コンタクト・トレーシング」を導入しているようだが、その先鞭をつけたのもこの国。

 

 麻薬に極めて厳しいこの国の法律・治世では、容疑者が有罪となれば死刑は免れなかったろうから判決そのものに異議はない。ただ、これがオンライン裁判で行われたことについて大きな「意義」がある。

 

 日本でも重大事件の裁判が停滞して、関係者が困っていることは同じ。先ごろ松江で、「緊急事態宣言後初の裁判員裁判」が始まったとの報道があった。アクリル板で仕切りをし、裁判員も減らしたと聞いている。こんなに苦労しているから、IT導入(つまりオンライン裁判)をすべきだとの解説があった。

 

 そこでオンライン裁判について改めて考えるにあたって、上記のようにまずは裁判そのもの整理が必要であろう。先日ご紹介したように、民事事件ではオンライン化の研究や試行は、行われている。

 

<続く>