Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

企業の労務管理5段階(後編)

 それでも僕が社会人になるころにはイデオロギー対立も下火になり、最初に参加したメーデーも「馴れ合い」の雰囲気だった。

 

(3)遵法はするが時間管理が頼りの段階

 組合員に課せられたのは「定時に出社、何時間残業」、管理職はというと「定時に出社、残業手当はつかない」なので、課長職になっても日常に変化はなかった。職場にいることが事実上の「Job Description」だった。成果目標はあったとしても形式的なもの、査定は上司の胸三寸である。仮に仕事がないとしても、欠勤は大汚点である。時間以外に管理するすべはない、未熟なマネジメント力の管理職も生き延びられた。

 

(4)時間と成果のバランスが検討される段階

 より高い生産性を求めていくと、必要なのは「成果・結果」であって職場にいることではないのに気付く。管理は成果を評価するのだが、そのためにはある程度の「Job Description」が必要になる。一方で、厳密な時間管理は必要ない・・・いやむしろ邪魔になる。フレックスタイムや(今はやりの)テレワークなどが増えてくるだろう。そうはいっても従業員の健康管理の観点から、超過労働や深夜労働を管理する必要はあると労務部門は頑固に主張する。

 

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(5)完全な成果主義の段階

 GAFAMはもちろんのこと欧米の先進企業では、「Job Description」は当たり前のこと。これをちゃんと遂行できれば、職場にいる必要はない。逆に休暇中でも重要な要件ならメールに反応するし電話にも出る。これは担当者でも、マネジメント層でも経営者でも同じだ。経営者は、株主に対して「Job Description」を公約しているからである。

 

 もちろん業種によって業務によって、先進的な企業でも上記の(3)段階にとどまっていることはある。ただ一般的にはこのような進化を企業は遂げていくはずだ。前編冒頭の話に戻り、なぜ政府が休業者への個人支援に臨むことになったかというと、一つには事業者に属していないフリーターのようなケースは別にして、事業者が(2)ないし(3)の入り口に留まっているからだと思う。

 

 「雇用調整助成金」にしても、ちゃんとした労務管理の記録がなければ、書類不備で認可されないのは当然のこと。今回の騒ぎで日本のいろいろな課題が見えてきたうちの一つに、「企業の労務管理の進化」があるようだと思います。