Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

国家緊急権を巡る論争(後編)

 そもそも憲法改正の議論が市民の間で盛り上がらなかった理由の一つは、「具体的に何条の何を変える、加える、削るのかわからない」ということである。ある種の人達は憲法9条2項に特化しているが、論点は他にもある。一言半句変えてはならないという「憲法原理主義者」以外であれば、皆さん何かしらの思いはあるだろう。

 

 それが今回緊急事態条項に限定するなら、国会議論も進められるかもと思えたわけだ。改めてどういう議論いなるか、勝手に考えてみた。争点は「国家緊急権」を巡るものになろう。国家緊急権とは、国家の平和と独立を危うくするような急迫不正の事態に対し、この危機から脱するために憲法の一部を停止して超法規的措置をとることができる規定のこと。

 

 一般に多くの国の憲法にはこの規定があり、これを持たないものは少数派である。日本国憲法においてはこの規定はなく、多くの憲法論者は日本国には「国家緊急権」はないとしている。外国の例ではドイツのワイマール共和国時代の憲法においても、大統領緊急令(第48条2項)があって、身体の自由・住居の不可侵・通信の秘密・言論集会結社の自由・財産保障などを一時的に停止できるようになっていた。ワイマール憲法は当時最も民主的な憲法だったが、そこにもこの規定はあったわけだ。

 

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 各国では武力侵攻以外にも、自然災害に対してもこの規定が適用されることはある。また政変にあたって一時期憲法を停止、戒厳令を布いて外出禁止や都市封鎖はあった。2006年のタイや2013年のエジプトでも、このような事態は起きている。

 

https://matome.naver.jp/odai/2137290074068887401

 

 日本でも古くは「三島由紀夫事件」で自衛隊に行動を促したことはあったし、「オウム真理教」も11月戦争と呼ぶクーデター計画を持っていた。

 

 今回はリアルなウイルスによる騒ぎだが、デジタル化がもっと進んだ社会になるとコンピュータウイルスによる騒乱が国家の危機になりうる。その場合は通信の遮断のような緊急措置も求められる。だから「緊急事態条項」の議論は急ぐべきというのが僕の意見。

 

 憲法にそんなもの入れさせないぞ、とおっしゃる方々に申し上げたい。過去の例では、緊急事態条項がなくてもクーデター勢力が「憲法(全面)停止」をした例もあります。憲法を守る立場にあればこそ、国家緊急権は盛り込むべきではないですか?