Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

経済政策と社会保障政策(後編)

 前編で「コロナ禍」で困った人に政府からお金を出すことが、経済政策なのか社会保障政策なのかわからないと述べた。しかし有識者に聞くと、この2種が混然一体となってしまっているケースは他にもあるらしい。その代表的なのが、中小企業政策。

 

 中小企業には、大企業に比べていくつもの優遇政策がある。現に前編で引用した「雇用調整助成金」にだって、通常時大企業67%、中小企業75%と差がある。僕が知っている代表的なものは、税制。

 

法人税率は23.2%だが、中小企業は800万円まで軽減税率19%

・交際費の損金算入可(800万円まで)、大企業は不可

・少額減価償却費は通常10万円までだが、中小企業は30万円まで

 

 このほか、支援策も充実していて中小企業庁は毎年100億円の「IT導入補助金」を持っている。それも長く継続的に。とかく悪役とされる大企業に対し、中小企業は国の宝、中小企業は地域の担い手・・・というスローガンは美しい。中小企業支援を打ち出して、あからさまな反対を食らう可能性はほぼない。

 

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 しかしちょっと待っていただきたい。これほど厚く手当されたら経営者は「中小企業を止めよう」とは思わないだろう。それはつまり、一定以上の枠から事業を大きくはしないということにならないだろうか?

 

 優れた中小企業があり、それが成長して次世代の日本の主力産業になるというのが、本来あるべき姿。それを支えるのが中小企業支援政策で、それなら「経済政策」である。しかし中小企業は市場の変化や国際関係などの荒波に弱いから、守ってあげないといけないと考えるならこれは「社会保障政策」になる。

 

 ここでも、経済政策と社会保障政策がごっちゃになった状況が見て取れるのだ。先日自民党議員が党幹部との会話内容を暴露した。

 

 某議員「補償しないと(中小)企業は潰れますよ」

 党幹部「もたない会社は潰すから」

 

 という内容だった。時期は不適切だが、この党幹部の意見にも「三分の理」はある。非生産的で成長の意志も余地もない企業に、上記のような優遇を延々続けているのであれば、「潰す」というのも在りうること。

 

 大企業の中でも多くの事業が生まれ育ち、途中で整理され他社に譲渡されることは日常茶飯事。それがあって企業として株主に顔向けできるのだ。廃業への危機感と大きくするんだという意志なかりせば、企業の大小に関わらずビジネスなどできないと思いますが。