Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

五輪延期の余波

 あるアスリートが言っていたが「オリンピックはその時期だけのものではない。数カ月前から予選・代表選考含めて準備期間を含めてオリンピックだ」。この夏に体力のピークを持っていくための努力は年単位で行われ、翌年は「もう動けなくてもいいや」という選手もいるらしい。であるならば、各国の「COVID-19」対応状況から見て、IOCが「延期方向で検討」していることは無理もない。

 

 経済評論家もいろいろな人がいて、延期となって今年の日本のGDP1.7兆円下がると危機感露わにする人がいれば、来年「COVID-19」のV字回復反動にオリンピック景気が来て万々歳という説もある。僕は経済音痴なのでコメントは差し控えるが、今回IOCが中止ではなく強行でもなく延期を選んでくれれば嬉しいことがある。

 

 日本産業界のサイバーセキュリティ意識も対策も、正直まだまだである。それを「オリンピック/パラリンピックに万一のことがあってはいけない」と政府が音頭を取り、さまざまな仕組みを構築してきた。そのリハーサルともいえる昨年のラグビー・ワールドカップは、少なくとも大きな混乱はなく終えられた。これに慢心することなく、東京2020本番まで頑張れというメッセージは常に産業界、特にインフラ産業に送られ続けている。

 

    f:id:nicky-akira:20200324182922j:plain

 

 冒頭のアスリートさんではないが、サイバーセキュリティ対策も準備期間が本番同様に重要である。中には疲れてきた企業もあるかもしれない。いや、多分各社の現場は疲れているはずだ。そこに急に「中止」といわれたらどうなるだろうか?頭の中では「いや恒常的に必要な対策だから、手を抜いてはいけない」とわかっている。しかし心のどこかで「一山越えた」安堵感が出てきて、現場にゆるみが出るだろう。

 

 仮に現場が緩まなくても、一番肝心な経営層がゆるむこともあろう。財務本部長や総務本部長が、「オリンピックのために用意した予算や人員の別分野(COVID-19対策)への転用」を提案するかもしれない。ある企業では5年前はほんの数人だったサイバーセキュリティ要員を、東京2020に向けて100人規模にまで拡充したと聞いた。その努力には敬意を表しながら、急増組織は解体も早いことを危惧している。例えば1年延期なら、アスリート等には申し訳ないけれど、僕らの業界はもう少し時間が稼げますよ。