Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

Engineeringは国の礎(後編)

 社会資本という分野のうち、橋梁や舗装道路の約70%、トンネルの20%強、下水道や公園の約80%が市町村の担当になっている。それを維持管理する土木部門の費用としては、ピーク時12兆円近くあったものが現在は65,000億円ほど、半分近くに減ってしまった。お金だけではなく、要員も減っている。霞ヶ関の人に聞いたところ、地方自治体の人員の推移は、

 

・市町村の職員数は、H17年度からH30年度までに約10%減少

・土木部門の職員数も減っていて減少割合は約14%と全体より大きい

・市町村職員数は、やや改善傾向であるが土木職員は増えていない

・技術系職員がいない市町村は、全体の約25%にのぼる

 

 となっていて、土木技術者が退職した後の補充ができていないという。そうだよね、僕と同期で地元の市役所に努めた土木学科出身の人も、もうとっくに定年。仮に後継の技術者を雇ったとしても、世代ギャップはあるだろう。また大学を出てすぐ役に立つような分野の仕事ではなく、1015年現場で鍛えてようやく一人前になるという。伊勢神宮式年遷宮のように20年に一度は建て替えて、新人で建て替えを経験した技術者が次の建て替えで棟梁をするような、スムースな世代交代は難しいのが現状だ。

 

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 ある地方自治体の関係者は、もう全てを維持することはできないという。彼は「橋梁トリアージ」という言葉を使った。「ポツンと一軒家」があって、そこに至る橋梁のメンテナンスが必要だとなったら、本当にその一軒のために市税を投入するのか議論が沸騰するという。「黒札」を貼られた橋梁を渡らないといけない住民は激怒するだろうが、ならば他の市民の税金でその橋梁を補修するのは許されるのか・・・。

 

 お金もない、技術者もいない、それでいて守らなくてはいけない社会資本は広がってしまっている。本来は社会資本を核に据えた街づくりをし、ある程度市民の権利を制限するのも「Engineeringのうち」、ではないだろうか。

 

 かなり追い詰められてしまった市町村の土木部門は、国の支援を期待するのだが国交省財務省の押さえつけられて十分動けない。2013年、笹子トンネル崩落事件を受けて国は「社会資本メンテナンス元年」を宣言して危機管理に乗り出していたはずだが・・・その効果、まだ十分に上がってはいませんね。ちょっと心配です。