Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

Engineeringは国の礎(前編)

 この言葉を「工学」と訳すこともできるが、その語源は「土木工学」である。エジプト文明が栄えたのは巨大な河川であるナイル川を制御できたからだし、ローマ軍が強かったのは堅固な築城術や人力を超える攻城兵器を運用できたからだ。そうそう、ヒトラーの陸軍には「戦闘工兵」という兵種があった。爆薬や火炎放射器を操る「Squad Leader」の中でのエリート振りはゲーマーとして身に染みている。

 

 もちろん、平和のための技術としての「土木工学」だって十分重要である。徳川家康は関東に転封になったとき、丘陵と沼の連続していた不毛の地江戸を丘を削って沼を埋め、運河を通して世界最初の100万人都市に育てた。「土木工学」は、国土の基礎ということだ。

 

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 僕が工学部の学生だった頃、工学部で人気の学科と言えば建築学科。構造計算のような数学系能力も要るが、デザインのセンスがあると高収入が期待できる花形職である。その次というと、電気・電子系と土木学科が人気を分けていたような気がする。前者は高度成長期の輸出産業に自動車と並んでエレクトロニクス系が多かったから就職先が多いメリットがある。ただ、田舎大学としては就職したらどこに転勤させられるかわからない不安がある。

 

 後者はドロ臭い現場工学だが、そのぶん田舎にでも多くの就職先があった。「日本列島改造論」の時代は終わっていたのだが、それでも地元の土建業はいっぱいあるし、優秀者なら地元の自治体へ就職することもできた。自治体となれば「親方日の丸」で終身雇用だし、なんといっても転勤がほとんどない。田舎者の親は息子が土木学科卒(修了までは不要)、xx市へ就職というのを夢見た。

 

 ところが10年ほど前、大学の先輩にあたる電力会社の役員と話をしていて、意外なことを教えてもらった。ちょっと地域的には(市町村より)広いが地元企業である電力会社の採用で、一番に優秀者は土木学科出身者だという。当然電気系は採用するのだが、これは競合も多い。土木学科は最優秀層が電力会社にやってくるというのだ。確かに山の中に巨大な鉄塔を立てたり、街中の電柱1本メンテするにも土木技術は要る。しかしそれでも最優秀層とはどういうことか、原因は地方自治体が彼らを採用しなくなったことにあるらしい。

 

<続く>