母校にやってきた目的は、今年で3回目になるという「アジア共創教育研究機構:Applied Social System Institute of ASIA」のシンポジウムに参加して、「30年後の文系研究者に求めるもの」を話させてもらうことである。この機構、名古屋大学の文系教室から選ばれた先生たちが、環境・制度・人材の3分野に分かれてアジア各国と一緒に研究し人材育成するというもの。シンポジウムには、大学改革で知られる松尾総長も出席しておられた。

この大学は松尾総長も医学部(臨床学)の教授であるように、もともと医学部・理工系の色合いが強い。ノーベル賞受賞者も6名輩出しているが、エネルギー・材料計の理系研究者ばかりだ。外国からの留学生も多いが、多くは理系研究室所属だ。僕自身の研究室にはスーダンからの留学生もいて、イスラム教徒との交流を経験している。そんな中、文系諸学科(経済・法・教育)でアジア共創をするというのは僕にも実感がわかなかった。午前中6名の教授が説明してくれたのは、
・脱炭素社会の実現
⇒ CO2貿易、国際炭素税、2国間(炭素)クレジット
・食料安全保障とコミュニティ
⇒ サゴ属ヤシ資源の商品化、栽培標準マニュアル
・ASEAN共同体の法学的研究
⇒ ASEANの統合理論と日欧・中国との戦略的関係
・AIと倫理
⇒ 法律家の視点からのリスクとガバナンス
・途上国の人材技能評価
⇒ アフリカでの先端的教育評価の研究
・教員教育プログラムとネットワーク
⇒ SDG’s教育と授業研究からのカリキュラム改善
といったものだった。正直どれも大事なのだが、僕が直接関われるとしたら、「AIと倫理」のテーマくらいかなとも思った。ただいずれのテーマも、僕がこれからお話しする「Global&Digital」分野には密接な関係がある。一番遠く見える「食料安全保障」にしても、シーズである食料とニーズである飢えた人の適切なマッチングはデジタル技術によって劇的に改善することがある。僕の出番は午後一番、これらのテーマに少しでも関係つけられるように、話し方を考えた。
<続く>