Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

恩納村の山を切開き(後編)

 講義室やデータセンターをひとわたり見せてもらった後、ある教授の部屋に案内され打ち合わせに入った。まずその教授に、OISTの現状やビジョンについて聞いた。

 

 ・目標は200人の一線級の教授を集めることだが、現時点では70人ほど。

 ・バイオ、生化学などの研究者は充足してきたが、数学系などはこれから。

 ・一線級の研究者を育てるのが主目的なので博士課程のみ。

 ・運営費用の95%は沖縄振興予算(内閣府)から出ている。

 

 僕が今回訪問した目的は、このハイレベルな教育機関を日本の産業界が活用するにはどうしたらいいかを考える予備知識を得るためだった。いろいろ聞いていくうちに、課題がわかってきた。日本の産業界に貢献(就職や日本の大学に残って共同研究)してくれる人材が、どれほど育つのか見えにくい。

 

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 まだ実数が少ないので仕方ないのかもしれないが、外国からの留学生が5年ここで学んで卒業したら母国や米国、中国などに行ってしまい日本に残らないのではないか。それを沖縄振興予算とはいえ、日本人・日本企業からの税金で賄っている。このあたりは議論になるだろう。

 

 また技術によるイノベーションを興す人材育成を目的としながら、複数の技術分野をヨコ通しで見ることのできる研究室は多くないようだ。そうだとしたら数学系などの充足よりある意味では急務だ。昨今のイノベーションは複数分野の業際・学際で起きる。まあ、ある分野で一線級のファカルティを集めてくれば、お山の大将かタコツボ型の研究者に傾くのはやむをえないのだが。

 

 状況を教えてもらって礼を言い、今後の議論の仕方など決めて辞去した。今度は高速道路で那覇空港へ向かったのだが、道中教えてもらったことを頭の中で反芻してみた。優れた研究・教育機関であることは疑いがない。ただ、これまで日本の他の大学などはもちろん、産業界との交流は非常に少なかったのではないか。逆にいうと「いい原石を見つけた。さてどう磨くか」が日本社会全体に突き付けられている課題。さて、また来ることになるのでしょうかね。それにしても遠いけど・・・。