Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

中国ビジネスの難しさ

 「習大人やその周辺は、相当センシティブになっているな」というのが、僕の第一印象だ。NBAの有名チーム「ヒューストン・ロケッツ」の幹部が、香港の抗議デモを擁護するツイートをしたことに始まる騒動を見てのことだ。NBAは米国政府ではない民間組織だし、「ロケッツ」は1チームでしかない。しかもその幹部がチームのオピニオンとして公表した件でもない。にもかかわらず、中国当局NBAの中国でのイベントを中止させ、放映まで止めさせた。

 あわてたNBA側が謝罪したことで圧力は撤回されるかもしれないが、今度は逆に米国内でNBAの弱腰を批判する動きが大きくなっている。「中国は経済力を使って、アメリカ人による批判を封じようとしている」と有力議員が言い始めた。これは米国民の憲法観に訴えて、「自由に意見が言えないよう圧力をかける、民主主義に対する挑戦だ」とでもいうのだろうか。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50725070Y9A001C1000000/

 ことはバスケットボールのイベント・放映の話ではあるが、米国に限らず多くの国の企業にとっての悩みの象徴である。日本の大手で約10%の売り上げと、約半数の関連会社を中国に持っている会社のCEOから聞いたことがある。「米中対立をどう判断するかだが、10%の売り上げをみすみす捨てる経営というのは考えにくい」とのこと。この企業は関連会社の整理に余念がなく随分減らしてきたのだが、中国では現地との合弁会社を設立せざるを得ず、気づいたら関連会社の半分が中国にあるようになってしまったそうだ。

 

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 トランプ先生があおりすぎる嫌いはあるものの、中国の経済的台頭と自由主義とは相容れない政治体制の矛盾は、「Great Fire Wall」のこちら側の国々にとっては悩みであることは確かだ。かつての「東西冷戦」に近づいている気配もする。日本は「東西冷戦」では、かなりの経済的恩恵を受けた。対東側ビジネスなどほとんどなかったし、西側陣営でいることのメリットも大きかった。

 

 しかし「米中対立の冷戦化」にあたっては、すでに多くの投資をし回収にいそしんでいる中国ビジネスの大きさが枷になるだろう。日本政府としては、「一帯一路」を封じ込める意味を持つ「FOIP:Free Open India Pacific」への参画を決めていて、日本企業も近い将来「Show the Flag」に答えなくてはならなくなるだろう。NBAの騒動は、その始まりの始まりになるかもしれませんね。