Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

業界内の格差(銀行編)

 僕は一時期、銀行システムのマーケティングをしていたことがあって、本来「融資と回収」が仕事のはずの銀行が、税金収納やビール券扱いなどの「手続き手数料業」に堕していると感じていた。銀行店舗の一角に必ずあるAutomated Teller Machine(ATM)は、本来窓口業務を自動化して省力化を図るものだったのだが、手段が目的化して設置台数を競うようなこともあった。

 

 「ライバル銀行が3,000台導入したなら、ウチは3,500台入れろ」というわけ。もちろん台数が多ければ利用者の利便性は高まるのだが、現時点でATMは日本中に20万台弱はあると思われる。どのATMでもいいから、自分のキャッシュカードでお金が出し入れできれば、利便性は確保される。

 

        f:id:nicky-akira:20190924211659j:plain

 

 ATMなるものが生まれたころから、銀行間のATM連携・共同利用は行われてきた。ただその多くは「利用者がA行のカードでB行のATMでお金を引き下ろそうとすると、手数料を支払わなくてはならない」というものだった。この辺りの事情・歴史は過去のブログで5回にわたって紹介しているので、興味ある向きにはそちらを参照いただきたい。

 

https://nicky-akira.hatenadiary.com/entry/2019/06/24/060000

 

 しかし大手の銀行・先進的な銀行は、ATMそのものを資産から負債と考え始めている。確かに利用者サービスは必要だが、一方で導入・管理・運用に掛かる「ロスコスト」を何とかしたいのだ。そこでとうとう、手数料抜きの完全連携を実現して余剰のATMを廃棄する方向を固めた銀行群がある。本来ライバルである、メガバンクSMBCMUFGである。

 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50094710R20C19A9EA3000/

 

 写真にあるようなATMコーナーは近々どちらかが閉鎖されるだろうが、滅多に人が並んでいるわけではないので大きな利便性カットにはなるまい。資金も人材も持っているメガバンクでも、このような合理化策をとってくる。一方地域でいがみあっている地銀はそれができない。これではますます業界内格差が広がってしまうような気がします。