Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

オープンデータ政策の現状

 内閣官房IT総合戦略室から、「日本政府におけるオープンデータ関連の取組」について聞く機会があった。政府や自治体が持っているデータは、デジタルかアナログかを問わず、基本的に公共財である。安全保障に関わるような特殊なものを除いては、あまねく誰でも見たり使ったり出来るのが望ましい。

 

 市民が作った政府であるとの認識が高い米国を筆頭に、政府データを公共財として使おうということはかなり以前から行われてきた。王侯貴族が支配した歴史の無い米国では、市民が政府と同じ情報を持っているのが「民主主義」の基本だとの考えが根強い。オープンデータは、民主(原理)主義の根幹なのだ。

 一方日本では、徳川家康が「領民には知らしむべからず、拠らしむべし」と言ったと伝えられ、「政府=お上」という意識が長らくあった。それでも米国を手本にオープンデータは進んできて、2014年にはデータカタログサイト「DATA.GO.JP」が開設され、2016年には「官民データ活用推進基本法」が成立した。これに「サイバーセキュリティ基本法」成立(2014年)と「個人情報保護法」改正(2015年)が加わって、データの適正な利用促進を進める法整備は一応出来上がっている。

 

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 成果としてIT総合戦略室が強調するのは、「DATA.GO.JP」開設以降、オープンになっているデータセットは25,000件に迫り、2014年から約70%増加していること、いくつか効果的なオープンデータ活用事例も出てきていることだった。

 

 ・気象庁の詳細気象データを利用した、新ビジネス
 ・AEDの設置場所を公開したことで、救命率向上を図ったアプリ
 ・マイナンバー中の法人IDを使った経産省の法人データベースの活用
 ・サイトを見て用が足せるので、情報公開請求が減って自治体業務が効率化

 などいくつか事例を紹介してもらった。産業界からの意見としては、「オープン施策が進んでいるのはいいのだが、何件オープンにしたとか何%の自治体が取組んだというKPIでなく、実際ビジネスや社会がどう変わったかを数値的に示すべきだ」、「政府の取組みは法整備・予算化・施策推進で終わるのではなく、広報・宣伝をしてどのくらいデータが使われたかが重要だ」などが出た。民間なら(施策を)やりましただけではダメで、「それで儲かったのか」と聞かれる。それに答える調査・広報・宣伝が必要でしょうね。儲かる話なら、政府に勧められなくても民間はやるわけですから。