Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

個人情報保護委員会、見参!

 現代経済社会では、デジタルトランスフォーメーション(略称DX)の成否が企業の寿命を決めると考えられている。DXとはICT機器を導入することでも社員にプログラム教育をすることでもない。新しいデータの利活用の仕方を見つけて、それを経営に活かしていくことが本質だ。それにはデータがないと始まらないので、データを大量に持っていると思われるプラットフォーマー企業が世界を制覇するとの危惧から、規制論が出てきたりする。しかしGAFA(+M)と呼ばれる企業だけが、データを大量に保有しているわけではない。

 今回問題が起きた「リクナビ」の一件、このサービスは就職活動や採用活動をする個人/企業にとって、なくてはならないプラットフォームになっている。企業にとっての関心事項は、いい学生が応募してくれて入社してくれるかどうかだから、希望するタイプの学生をできるだけ集め、これはと思った学生に逃げられないことである。集めるほうはともかく、内定を出した後辞退されてしまうケースはある程度はやむをえない。その確率を事前に予想できたら・・・というのは企業採用担当者の切実なニーズである。そこで「新しいデータの利用法」をリクルートキャリアが提案してくれたわけだ。

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 このデータ活用事例は、かなり斬新なものである。コンサルティングなどのサービスに混ぜるのではなく、データそのものを販売するというのは今後増えていくだろう新しいビジネスモデルである。データを売る商売というのは、実はそんなに多くない。機器販売のおまけとしてとか、サービスの価値向上のために使われるデータがほとんどなのだ。ところが今回は、対象である求職学生の了解をとらなかったりとり方が不十分だったとして社会問題になった。事件発覚から1ヵ月近くたって、個人情報保護委員会リクルートキャリアに対して是正勧告を行い改善報告を求めたという記事があった。

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1908/26/news111.html 

 これは僕が知る限り、同委員会が初めて出した勧告。事実上マイナンバー法個人情報保護法を管掌する部署として、ついに「伝家の宝刀」を抜いたわけ。委員会には、ただ叱り付けるだけでなくどうすべきかを指導し、その事例を多くの後続する企業群に示して欲しい。リクルートキャリアは悪かったと認めているので本件は速やかに是正されると思うのだが、他の企業が「新しいデータの使い方」を躊躇するようになるのは困る。先日の「7Pay」の件も含めてだが、DXでイノベーションを興すには前提条件としての、サイバーセキュリティとプライバシー保護が必須だ。その知識や体制なしに徒にDXを急ぐと、企業価値そのものの棄損につながりかねないことをこれらの事件は教えてくれていますね。