今のところデジタル革命の象徴とされるのが、AI(人工知能)とIoT(モノのインターネット)。従来型のテクノロジーにこれらの技術を加えると、イノベーションが起きる可能性があるのは全ての業種/業界について、である。まさかと思われる業界にも、それがやってきている。
例えば、技術的に保守的な業界である銃器産業。ありていに言うと技術発展の遅い分野である。何しろ1911年制式になった拳銃、コルトガバメント1911(Combatでサンダース軍曹が持ってた)は、70年ほども米軍は採用していた。ドイツ軍がマシンピストルと称する(今はアサルトライフルと言われる)歩兵用の自動銃MP43/44を開発して以降、その技術を流用したAK-47をはじめとして世界にこの種の銃があふれた。今でも大量射殺事件に使われる凶器の多くは、この種のものだ。
ライフルの弾数が5発くらいだったボルトアクション式の場合、慣れた射手は残弾を普通に覚えていた。しかし銃が半自動から3点バースト、全自動になるにあたり、また弾倉が20~30発入りになるにあたり、弾倉に何発残っているかは撃っている本人にも分からなくなった。
柘植久義の小説では、敵から銃を奪っても何発残っているか分からないから、もったいないが新しい弾倉に付け替えるというシーンがある。これは、生き残るための「芸」としては妥当なことだ。この記事では、残弾を銃だけではなく兵士を指揮・統制している中央で把握できるとある。まさにIoTが戦場にもやってきたのだ。
この話は戦場の未来を示してると思う。もともと戦場ではC3I(Command Control Communication & Intelligence)が重要と言われている。それが個人用銃器までネットワーク化できれば、戦術的効果は高まる。採取されたデータによって、個々人が早く撃ち出しすぎた、無駄に弾を使いすぎるなどの傾向も得て対応を分析することもできる。