Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

サイバーセキュリティ産業の活性化(前編)

 比較的大きな企業の中でも、サイバーセキュリティビジネスの担当部署はなかなか陽の目を見ない部署だ。30年以上前から、コンピュータ導入で合理化できるけれど新しいリスクも増えるはず、だからセキュリティ対策はビジネスになるという意見はある。もはや石器時代の話だが、銀行システムのプログラマーが決済情報のセント以下を切り捨てて、それを自分の口座に入れるという横領をやった。1件は平均0.5セントでも、100万件の取引があれば5,000ドルになる勘定だ。インターネット以前から、デジタルトランスフォーメーションはデジタルリスクを増すのは疑いがない。

 特に研究開発主導型の企業では「新事業は新技術によって成り立つ」と考える輩が多く、サイバーセキュリティからみの新技術にメドがたつと新しいビジネス部署を作って「拡販」をすることになる。それで意気揚々と売り込みに行くのだが、お客様から

 ・なんでそんな面倒なオペレーションをしなくちゃいけないんだ。
 ・メモリを喰うし、性能が遅くなるじゃないか。
 ・(揚げ句)君は、ウチの会社が泥棒を飼っているとでもいうのか。無礼な!

 と怒鳴られておしまい。大手のお客さまを抱える営業部門にしてみれば、お客様との良好な関係をぶち壊す「攪拌」部署にみえてしまい、社内での評判もガタ落ちである。それで1年か1年半やってみると、投資(研究開発だけでなく、販促や諸経費)を回収するメドは立たなくなってしまう。一時期膨らんだ希望は急速にしぼみ、集められた要員はどこかに散っていく。長い会社員生活でなんども見た光景だが、これが独立した企業となると事態はより深刻だ。

 

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 日本でサイバーセキュリティの技術やソリューションを提供している企業はこのところ増えてきていて、かつての外資系ばかりだった状況から変化してきている。米国の巨大な市場で実績を積んだ企業やイスラエル・英国といった政府が肩入れしている企業が世界市場では強く、それをそのまま日本に持ってきているケースは今でも少なくない。こういう事態が大嫌いなのが、「通産省のDNA」。世界に日本のモノがあふれていると機嫌がよく、日本に外国のモノがあふれていると不機嫌になる性向は、通産省経産省になり、モノがコトやサービスになっても変わっていない。

 

<続く>