Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

製薬業界のデータ活用(後編)

 もうひとつは「リアルワールドデータ」、個人の治験データではなくもう少し統計的なものとして市販されているもののことだ。例えば糖尿病患者は網膜症を発症する確率などというものには販売元がある。例えば大手の保険会社などが、持っているデータを(おそらくは)統計化して売っているのだろう。

 

 製薬会社はパブリックデータとリアルワールドデータに自社内の治験データなどを合わせて、迅速に研究開発品のセレクトを行っている。特に昨今は、AIにこれらのデータを喰わせるとより効率的に毒性をもってしまう薬剤候補などを選別できるわけだ。

 

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 ここまで聞いて2つ疑問に思った。まずひとつは「Cross Border DATA Flow」のこと。パブリックデータには国境は無く世界中で見ることが出来ようが、リアルワールドデータはと聞いた。するとやはり「国によっては国内で見てくれというところはある」とのこと。いわゆる「DATA Localization」である。

 

 もうひとつはパブリックデータの不安定さ。国連機関とまではいわないが、しかるべき組織が管理していないと維持が難しいのではないだろうか。普通にボランタリーな管理者の後継が見つからないというだけではなく、今はサイバー攻撃の脅威も大きい。某大学の教授が研究室で管理しているようでは、十分なサイバーセキュリティ対策はとれまい。ここに攻撃があって書き換えられたり(本来はOpenにできない部分も)漏えいしたりしたら、何か不都合なことが起きそうな気がする。

 世界が緊張感和に動き一緒に経済発展しようとしていた時代は、データベースの構築も良識によって行えた。しかし今は逆の流れ、データベースを囲い込んだり意図的に破壊・改ざんしたりする輩についても警戒が必要である。ゲノムのデータなど、場合によっては戦略兵器になるかもしれない・・・というのは僕の思い過ごしでしょうか?