Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

市民の熱狂、外交の危うさ

 前の外相ボリス・ジョンソン氏が英国首相に就任して、「Brexitは最大の好機だ」と意気軒昂ぶりを示している。トランプ先生以上の嘘つきだという評判もあるし、本当にあの複雑な英国を導いていけるのか、不安のほうが大きい。愛嬌があると言う人もいるが、僕にいわせれば「地獄の道化師」のようなものだ。
 
 市民が面白おかしく挙動を見ているうちに、国ごと地獄へまっさかさま・・・なんてことになりかねない。これまで前任者のメイ首相が苦心を重ねて欧州委員会側をまとめた合意案はことごとく否決、「合意なき離脱」だけは避けて欲しいと考える国際社会の想いを裏切ってきた末の「道化師登場」である。

 それでもイギリス国内は、沸き立っている。ジョンソン首相率いる与党保守党の支持率は急回復、30%となって野党労働党(25%)、最大議席を持つBrexit党(14%)を上回った。それでも、同時期の調査(対象2,000人)では、残留52%、離脱48%という結果ではあるのだが。「なにがなんでも10月末には離脱する」と叫ぶ道化師に、市民は魅了されてしまったように思う。

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 同じ様な事だが、より深刻かもしれないのが韓国の文政権。以前紹介したように米国が「同盟国」であることをあきらめた可能性があり、フッ化水素などの輸出管理強化だけではなく「ホワイト国」からの除外も決められて、産業界が窮地に立っている。それなのに文大統領の支持率は50%を超え、市民の熱狂に支えられていることがわかる。
 
 今回の貿易関連の騒ぎは、米国のファーウェイ対策の一環との説があって、5Gに必須の高密度半導体を作れるのは韓国のサムスンと台湾のTSMCTSMC中国企業への提供はしない方針だが、サムスンがファーウェイに近づき米国の逆鱗に触れたのが原因だともいう。だから日本からサムスンへのフッ化水素等を制限したという説だ。

 であれば、日韓の「慰安婦」「徴用工」のあつれきとは違う次元の話で、韓国の存亡に関わることだ。しかし高い支持率を得た文政権が、本件を日韓の歴史問題に紐付け続けるなら悲劇が待っていよう。ただ、日本もこれらの件を対岸の火事と見ているわけには行かない。「ホワイト国」除外のことを民間意見募集(パブコメ)にかけたところ、4万件もの意見がきたと言う。大半は個人で、肯定的な意見がほとんどだったらしい。普通パブコメなど数十件から数百件がいいところなのに、この数は日本の市民の「熱狂」を暗示していないだろうか?