Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

民生サービスの軍事転用

 かつては軍用品は特殊なもの、零下20度でも歪みもしないで正確に弾丸を飛ばす銃身とか、4万メートル先を観る光学レンズのような「カネに糸目をつけない」ものを軍は調達していた。第二次世界大戦後、「軍隊」を持たなくなった日本では、それまで軍事用途に使っていた技術を民生転用した。零戦の構造設計は新幹線に活かされたし、戦艦大和の4万メートル観測レンズ製造技術はニコンのカメラに使われた。他の大国は一気に民生転換できなかったから、「ものづくり日本」は経済的に発展したわけだ。

 ところが昨今では、民生技術が軍事転用されることも珍しくなくなってきた。代表的なものがコンピュータ、かつては専用の軍事コンピュータを使っていた各国軍隊も技術革新が早く、単価も安く、兵士たちも慣れている民生用コンピュータを使うようになった。それは組み込み型でも同様で、例えば軍用車両のカーナビは民生用をベースにしている。さらには、機密性の低い業務などは民間のクラウドサービスを使うこともあるのではないかと思っている。モノを買って運用するよりは、サービスで提供してもらったほうが安くて便利だからだ。

 

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 今日見たニュースで、究極の民生サービスが軍事転用されている・・・といっていい記事があった。それは、フランス陸軍が将来の戦争に備えて複数のSF作家を雇って「混乱のシナリオ」を研究させているということ。

https://news.livedoor.com/article/detail/16832389/ 

 2018年にフランスでは、人工知能(AI)やサイバーセキュリティを研究する「国防イノベーション庁」が設立されていて、この組織が「混乱のシナリオ」に一役買っているらしい。民間はデジタル革命によってイノベーションをやらないと生き残れないので必死だが、国防(軍事)の世界でもデジタルイノベーションはやはり重要テーマなのだ。この記事は「Red Team」と言っているが、SF作家たちはハイテクを使ってフランスを侵略する悪役を演じるのだろう。

 日本では最近SFというものはあまりはやらない。現実がSFを追い越してしまったからだと思うのだが、SF作家に限らず「悪いことの出来そうな連中」はいる。日本の防衛省も同じ様なことやってくれるのなら、僕も手伝ってもいいですよ。(性格の)悪い人なら何人か知っていますから。