Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

IoTビジネスの悩み

 米国製造業の老舗、General Electronics(GE)の経営が揺らいでいる。設立が1892年というから、125年を超える歴史を持っている。多国籍企業でもあり業容も幅広く、いろろなM&Aを経て部門売却も相当やったのだが、それでも現在30万人を雇用し1,500億ドル近い売上高を誇っている。しかし伝統の電気事業が低迷、注力してきた金融事業が不振、ヘルスケアその他の「新事業」も全体のマイナスをカバーするには至らず、100億ドル近い年間赤字を抱えている。いろいろ打開策を取っているのだが、株価は乱高下を繰り返し安定していない。

 
 このくらいの企業となると、膨大な株主がおり、その相当部分は基幹投資家などのモノ言う株主である。赤字の解消や、事業拡大へのシナリオが見えないと雇われCEOの首など吹き飛んでしまう。まあ、その責任に見合った報酬を貰っているのだろうから、やむを得ないところではある。
 
 僕自身は一昨年カリフォルニアの「GEデジタル」を見学していて、この分野の将来性についてレクチャーを受けデモも見た。あらゆるものがインターネットにつながる世界を支えるのがIoT(Internet of Things)という技術。草分けの一人がGEである。航空機に使われているジェットエンジンの状況(振動、油圧、温度等)をリアルタイムにモニタし、膨大なデータを蓄積して得たナレッジを使って予防保守をするという話を最初に聞いたのは15年近く前。結構感動したし、日本の製造業もこういうことを導入/拡大しないといけないと思ったものだ。
 
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 GEはこの事業の拡大を加速するため、専門の会社「GEデジタル」を設立し内外にアピールしていた。しかし今回はこれも売却の検討対象だと噂されている。成長分野のはずなのに売却検討対象というのは、単純に高く売れるからだけではないとある人が言う。
 
 IoTは便利なもので利益も生むと期待されるのだが、万一サイバー攻撃を受けて機器の誤動作などするようになったら、機器のモニタをしている事業者の責任が問われかねない。彼はモニタ用のルートを悪用されて被害が出ることを考えれば、これはリスクビジネスだというのだ。当然技術者はこれと戦うのだが、経営者がどう考えるかは別の事。毎日ささやかな日銭が入ってくるビジネスなのに、万一ジャンボが落ちたりすればドカ貧になるわけ。
 
 しかもそのリスクは万一から千一、あるいはそれ以上に上がる公算があります。うーん、IoT時代のビジネス全体に陰を落とす話かもしれません。