Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

サイバーセキュリティ国際シンポジウム

 今月の11〜12日、慶應義塾大学と笹川USAの主催になる「第八回サイバーセキュリティ国際シンポジウム」が、三田のキャンパスで開催された。毎年2回のペースで開催されるこのイベント、米国の大物スピーカーもやってくるので専門家の中では評価が高い。以前はデニズ・ブレア(元)提督自身が来日して講演などしていた。数年前だったが、聴衆の中にいたブレア提督が質問に立ち、「日本は(憲法9条を)このままにしておいていいのか。サイバー攻撃は軍事行動と同じだ。反撃できないようでは、日本の危機だ」と言ったこともある。

 

 その時のパネリストとして演壇にいた産業界の人が、「産業界の取り組みをご紹介した際に、まだやりのこしていることがあると申し上げたが、その点が一番大きな議論していないことだ。デジタル経済を議論していて安全保障にどこまで踏み込んでいくかに悩んでいる」と、ある意味かわしていた。

 今回は、ブレア提督はビデオメッセージだけ。その代わりと言っては何だが、米国公使、EU公使、英国公使参事官、イスラエル大使館の担当官などが挨拶に立った。基調講演は、経団連でサイバーセキュリティ委員会委員長の遠藤NEC会長だった。その後、メイン会場のほかに4つの小会場に分かれて、25ほどのセッションが行われた。

 

 僕は北館3階の会議室で行われたセッションを2つほど聞いた。この部屋、まるで教授会をやるための部屋に見え、柔らかいVIP用イスと広いテーブル、各席にマイクの設備もある。メイン席だけで30席はあるだろう、それに加えてマイクのない30くらいの席がある。

    f:id:nicky-akira:20190718234541j:plain


 写真は、人材育成関係のセッションのパネリスト席を撮ったもの。このセッションを含め、意外に聴衆が多いことに驚いた。昨年末同じ場所でのセッションでは聴衆は20人強、内容は面白かったのでもっと大勢きてくれればと思ったものだ。今回は少なくともその倍、3倍近い聴衆が来てくれたことには運営サイドもびっくりしていて、用意したパンフレットなどが売り切れてしまい困ったらしい。

 

 イベント全体としても事前登録700名というのは平年並みだったが、実際の来場者は500名を越えたとのこと。普通このような無料イベントの場合、半分も来れば盛況なのだがそれをはるかに越えてしまった。主催者としては「社会のサイバーセキュリティ意識の高まり」だとポジティブに捉えているようだが、僕はそこまで楽観はできていない。やはりこの週の初めに起きた「7Pay事件」の影響だろうと僕は思う。

 

 TVニュースで取り上げられ、社内では「同じようなことにならないかチェックしろ」とTOPが命令しているのではないか。本当の担当者は忙しくてイベントに行くヒマはないのだが、その外郭にいるような人たちは「そういえば登録してあったアレ、聞いておくか。TOPに報告するネタにもなるし」とやってきたのではないだろうか。まあ、動機はともあれ関心を持ってもらうことは悪いことはないのですが、できれば事件がなくても(いや無いときこそ)意識を持っていただきたいものです。