Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

フランスの「デジタル課税」

 今年のG7議長国フランスが、以前から検討されてきた「デジタル課税法案」を上院でも承認した。すでに下院は通過していて、いよいよ大手ITプラットフォーマーに対する課税が実現する。その内容は「世界での売上高が7億5000万ユーロ(約914億円)以上、フランス内でのデジタル売上高が2500万ユーロ以上の企業を対象に3%を課税する」というもの。

 

 フランス国内の税金なのに世界の売上高が条件のひとつになっているのが、不思議と言えば不思議である。もしフランス独自の検索サービス「Foogle」なんていうのが出てきたら、2500万ユーロ以上の売り上げでも課税しないよという意味だろうか。それならある意味の「保護主義」ではないか。

 当然多くの「大手ITプラットフォーマー」を抱えている米国は反発をしているが、米国がなんらかの報復措置(フランスワインへの関税引き上げなど)をする可能性は低い。今回の課税対象となるような企業は米国でも西海岸に拠点を置いているものが多く、いわばコスモポリタンである。トランプ先生の支持基盤ではないから、彼らをカバーしてやっても選挙に有利になるわけではないというのがその理由。米国の反発は、口先だけで終わるだろうと僕は思う。

 すると、フランスだけではないいろいろな国が同じような事を考え始めるだろう。確かにEU内のビジネスなら、国境を渡っても拠点以外は非課税というのは、EU内で矛盾をはらんでいる。ルクセンブルクアイルランドのような税金の安い国に「大手ITプラットフォーマー」が拠点をおいて、売り上げをあげているだけの国には税金を払っていないのは事実だ。

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 しかしEU統合ってそれがひとつの目標だったとも思う。悔しければフランスもルクセンブルクなみに税金を下げるか、別の優遇措置をとればいい。日本国内での事業所誘致合戦のようなものだ。しかし今回フランスは自らを「主権国家」であると宣言して法案を承認した。「Brexit」とはやや違うが、EUというものの限界を示した例といえよう。

https://nicky-akira.hatenablog.com/entry/2019/06/14/060000 

 日本でも税金ではないがGAFA規制のような話はある。これに対しては、そもそもプラットフォーマーの定義があいまいだということで上記で異論を述べておいたが、フランスのデジタル課税の話は今後の日本での議論を巻き起こすことになろう。またひとつ、デジタル政策上の論点が増えましたね。