Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

プラットフォマー規制論

 昨年あたりから日本で「プラットフォーマーによる不公正取引」をとりあげて、これを規制する新法や独占禁止法の改正をすべきだとの議論がでている。ここで言うプラットフォーマーとは、GAFAGoogle, Amazon, Face-book, Apple)に代表される国際的なインターネット企業のことである。確かにGAFAは多くのデータを握り市場での優位性を高めつつある。彼らが「優越的な地位」を利用して、利用者や関連事業者に新たな負担を求めてくる可能性は否定できない。


        f:id:nicky-akira:20190525115751p:plain

 ただ各所で議論されているあたらしい規制の導入は、そのような危惧だけが理由ではないだろう。通産省時代から経産省は、「世界に日本のものがあふれているとご機嫌で、日本に輸入品がなだれこんでくると怒りだす」傾向がある。この考え方は、モノ経済からサービス経済に移りかけている今でも変わっていない。なんとか巨大IT企業に足かせをはめられないかという意識がどこかにあることは確かだ。

 実はこのような考え方、欧州でも台頭しつつある。欧州委員会(の一部)は年末ごろをメドに、プラットフォーマー規制をなんとかできないかと言っている。しかしインターネット経済/デジタル経済はプラットフォームとアプリケーションの2層に綺麗に分かれているわけではない。
 
 例えば自動運転車で有料道路を使ってドライブに出たとしよう。道路等の料金システムは地図情報の提供を求めるから、地図事業者にとってはアプリケーションだ。一方料金決済情報から新しい旅行の提案や宿・レストランのマッチングをする事業者から見ればプラットフォームだ。実態はもっと複雑で、複数の事業者がミルフィーユのように何層にも分かれてサービスを形作っていくはずだ。

 この視点から、一体どこをプラットフォーマーというのかとの疑問がでてくる。このことを関係者に聞いたところ、欧州委員会では消費者に最終サービスをする事業者だけをプラットフォーマーと考えているとの答えだった。ただインターネット経済は複雑な上に流動的なので、プラットフォーマーの定義はこれからの議論だとも付け加えた。

 当局やその背後にいる一部の産業界が規制したい気持ちは分からないではない。しかし上記のように複雑なミルフィーユ構造は流動化してさらに複雑になるはずだ。そこに日本企業が現れて、キーになるポジションを占めてしまうかもしれないのだ。そういう芽を摘むような規制にだけはして欲しくないですね。