Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

目の上のコブ

 インド・太平洋戦略と米国がいうのは、もちろん中国包囲網。「一帯一路」構想や、南シナ海の基地建設など中国の進出を食い止めようということだ。昨年のAPECの首脳宣言は米中対立で見送られたが、その舞台となったニューギニアポートモレスビーは中国の太平洋戦略の第二ラインの南端にあることは昨日紹介した。


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 では第一ラインはどうかというと、その北端は尖閣諸島、あるいは沖縄・奄美かもしれない。第一ラインの最重要ポイントは、恐らく台湾だろう。今となっては、朝鮮半島の38度線より台湾海峡の方が危険な印象すらある。
 
 そんな台湾も、なんと南沙諸島エリアに拠点を持っている。この拠点、南シナ海支配を目指す中国にとって「目の上のこぶ」であることは疑いがない。台湾は本土に近いいくつかの島も領有していてそこには守備兵が駐屯している。昔、テレサ・テンが島の守備隊を慰問して迷彩服姿でランニングをしている映像を見た記憶がある。これらの小さな拠点は、中国軍がその気になればひとたまりもないが、あるとないとでは政治的に大きく違う。
 
 南シナ海の実効支配から、台湾海峡制海権確保、第一ラインの要である台湾上陸・占領を目指すには実力行使が必要だし、それなりの時間もかかる。これらの拠点に襲い掛かってから占領に時間をかけ過ぎれば、国際社会が反応して中国軍は(政治的にも軍事的にも)孤立するかもしれない。だから、これは「目の上のコブ」なのだ。

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 ただ台湾では、与党の政治的苦戦が続いているようだ。次の総統選挙には台湾のトランプこと「鴻海」の郭会長が出馬するらしい。彼は中国本土に多くの資産と人脈を持つ融和派である。当選すれば現政権の独立姿勢が変更になる公算が高い。さらに中国発のサイバー攻撃で民心が左右されていたとしたら問題だ。軍事行動は当面難しいと見て、内側から切り崩すというのは、デジタル時代以前からよくある話なのですから。