Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

予兆を捉まえるしかないのだが

 また痛ましい事件が起きた。登戸駅はまんざら知らないところでもないので、報道の映像を見て心が痛む。幸いにして物理的に傷を負わなかった子供たちも、PTSDに似た症状を示す可能性があると医師が言う。集団登下校は誘拐やいたずら目的の犯罪には有効だが、わざわざ獲物を集めてあげる側面もあったと言う学者もいる。

 

 「死にたいなら一人で死んでくれれば」というのも、識者によるといけないのだそうだ。今回の加害者に似た予備軍は数十万人もいて、「一人で死ね」との世論が大きくなると「なら道連れを一人でも多く」とよりエスカレートした凶行に及ぶかもしれないという理由だ。

 数十万人の予備軍がいるとして、どうすればいいのか?アフターケアも大事、防御も大事・・・でも一番いいのは予防することだと僕は思う。予防のためには「予兆」をつかまないといけない。今回のケースのように、加害者がリュックから包丁をとりだし手袋をはめてからでは遅いのだ。しかし、報道各社が加害者(容疑者じゃないよね)の映像を中・高校生の頃のものしか入手できていないということは、極端に社会と接する機会の無かった人物だということだ。こういう人の「予兆」はどうすれば検知できるのだろうか?部屋を与えていた伯父伯母も高齢だし、「家族」に過度に期待するのも難しいと思う。

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 加害者が自室に大量殺人に関する書籍を持っていたとの情報もあった。通販で買ったか、書店で買ったかはともかくこれらの書籍の購入の瞬間には社会と接触している。あと新品の包丁を4本も購入している。もしインターネットを参照しているのなら、大量殺人や人の殺し方に関するサイトを閲覧していたかもしれない。書店や刃物店にチェックしてくれというのはよほど怪しげなケース以外は無理としても、サイトの閲覧なら(人手を介さない)自動チェックは可能だ。

 マキャベリ的な発想として、大量殺人・人の殺し方サイトを作り、そこに頻繁に来る、もしくは今回のような事件があったら急にやってくるようになった利用者をリストアップすることは技術的には可能だ。もちろんこれは囮捜査の類だから、特定の犯罪の対処以外には違法である。かつては「引きこもり」の接点は家族か同居人、世話をしている人に限られていた。しかしインターネット時代には、新しい接点ができたことも事実である。どのような条件が重なれば、上記のような「予兆検知」を法的に可能にできるのか、デジタル法曹界の今後のひとつの論点のように思います。