Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

20世紀の残り物(終身雇用)

 経団連会長だけではなく、初の30兆円企業であるトヨタの社長からも「日本企業は、今後は終身雇用を維持できない」との発言が飛び出して、ひと騒動起きている。弁護士の団体からは「大企業は解雇規制を撤廃したいだけだろう」と非難の声が出ているが、これは物事の一面しか見ていない(かあるいは立場上の)発言であろう。

 

 「ソ連崩壊」のことをある識者が、「市民の自由は束縛する代わりに、衣食住は政府が(計画経済で)守る」という統治の基本方針が、経済破綻で後者ができなくなったことによるものだと教えられた。日本企業にもこれに似た「基本方針」があって、その一部が「終身雇用制」なのだ。

 

 「人事・処遇面や副業禁止などで社員の自由は束縛するが、定年までもしくはその後まで雇用はするし福利厚生も充実させる」と読み替えれば、ソ連共産党と日本大企業の共通点がわかるだろう。それで、日本企業がどう変わってきたかというと、グローバル競争もあるが、コンプライアンスダイバーシティ重視でハラスメントに厳しい「グローバルスタンダード」が浸透してきたのが大きい。

 

 今回の出張のフライトで見た、池井戸潤原作「七つの会議」は上記旧態依然とした日本企業の暗部をえぐった映画。大手企業のリコール隠しものだが、現場の一営業係長の告発で事件は急展開する。この企業ではコンプライアンスは存在せず、ハラスメントが横行する。このような体質を改善するには、従業員全員に啓蒙教育をしないといけない。よく悪者で登場する人事部長のように「従業員には知らしむべからず、拠らしむべし」ではもう成り立たないのだ。

 

 

    f:id:nicky-akira:20190517055411j:plain

 一方従業員個人としても、コンプライアンス等の意識を十分に持った上で他の企業でもやっていけるビジネス上の実力をつけないと、現状の職場も危ないということになる。企業に盲従して貸しを作ることで一生安泰という借りを返してもらうという「貸し借り」の時代ではないのだ。

 

 20世紀の日本には、こういう「貸し借り」制度が多すぎるように思う。その一端が「終身雇用は守れない」との企業経営者の発言に表れている。僕なりに経営者の言葉を言い換えると、「忠誠心を気取った盲従はいらない。企業は皆さんの能力・実績・アクティビティを正当に評価して対価を払う」ではなかろうか。これなら、貸し借りではなく同格の契約ですよね。