Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

社会インフラの「除却」

 僕が子供の頃は、日本も人口増加国家だった。子供の数は僕より10歳ほど上のいわゆる「団塊の世代」で一旦ピークをつけ、徐々に減って僕の世代が一番少ない頃。以降「団塊ジュニア」の世代でもう一度ピークをつける。そのころの社会課題のひとつが「人口爆発」、今でも全世界的にはこの問題はあって、人口100億人を地球が支えられるのかという議論は時折耳にする。

 人口過剰に備えて社会インフラ(道路、鉄道、橋梁、港湾、上下水道、電力網、ガスパイプライン等)が建設され、宅地の開発・造成が進み、行政サービス住民の居住区も広がっていった。当時はそれが当たり前と思っていたのだが、人口減少社会になってみるとこれら社会インフラの維持が負担になってきた。

 

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 国交省では、社会インフラのメンテナンス費用も見積もりをして公開している。2013年に3.6兆円だったものが、10年後には4.3~5.1兆円に膨れ上がる。これは新規のものを作らないでという前提であるし、幅があるのは予防保守などしてコストを抑えられたらという仮定があるからであろう。
 
 しかしいくら工夫をしても増えるものは増えるようで、これ以上税収も増えないだろうし国債も相当重石になっているし、「増えますよね」とだけ言っているのではラチがあかない。維持費を抑えるためには、利用頻度の低いものを捨てるしかないと思う。官僚に聞くとそれは「除却」するのだというので、新しい言葉を覚えた。もちろん国交省も対象となるインフラを整理・統廃合しようとしていないわけではないが、なかなか進まないのも事実だ。
 
 インフラを廃止するということは、その周辺になる地域の価値を下げることになる。住んでいる人の利便性は下がるし、地価も賃貸料も下がるだろう。行政サービスの低下もあり得て、かつて大津市では36箇所ある支所の機能を10箇所に減らす案を出したところ、市民の猛反対にあって実行できなくなっている。

 これはどの街でも(もちろん東京でも)起きることだ。上記の削減案は利用頻度等を考慮したもので、他のインフラとも連動した計画になっていることを期待しているが、このまま放置すれば「無計画な除却」が発生して、ある地域では行政サービスがない、他の地域では電力が不安定、別の地域では医療サービスがゼロなどということになりかねない。住民のコンセンサスによるコンパクトシティ化、地方政治の重い課題です。