何度か書いたが、霞ヶ関官僚はレトリックの達人である。401K年金を「確定拠出年金」と称した発想には頭が下がる。本当のことを言えば「非確定給付年金」なのだが。「防衛装備品移転」というのも、年金の例には及ばないがなかなかの力作。ストレートに言えば「武器輸出」である。
どんなものでも、大量生産のラインに乗れば安くなる。しかし一国で必要とされる量は決して多くないとき、各国が目指すのは「輸出拡大」である。もちろんあからさまな敵性国家に売れば軍事技術の暴露になるし、優秀な武器であればあるだけ自国の脅威になってしまう。だが輸出によってコストが下がるのは期待したい。
以前ギャビン・ライアルの小説中に「英国が次期主力戦車として期待している車両をヨルダンで試験させている」シチュエーションがあった。英国政府は同盟国が採用を決めて生産量が確保でき、コストが下がってから発注したいわけだ。
なかなかそういうことが出来ないのが日本の「防衛装備品」、しばらく前に次期装甲車の開発をコマツが断念したという記事があった。調達数が伸びず開発費の回収が見込めないからだという。防衛装備品のベンダーが「御国のため」と赤字覚悟で開発や製造をしていることも聞いたことがある。
昨今日本政府は対米赤字削減のためかイージスアショアやF-35、オスプレイなどを買い込んでいるが、装甲車なるものをどうしても国産にしないといけない理由は不透明だ。同盟国の世界でスタンダードになっているものがあれば、それを調達するのが理にかなっている。
一方世界で通用するものであれば、どんどん輸出に回してコストを下げられるはず。こういう経済合理性を言うと、「国防のことをたかが経済のためにおろそかに出来るか!」と怒られてしまうのだが、そこは議論が必要な事項だろう。