Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

日米欧データ流通圏

 来月には、G20の大阪サミットがやってくる。ここで日本政府は、「大阪トラック」というデータ流通管理の枠組みについての議論を始めたいとしている。この記事によると欧州サイドは前向きなようだ。

 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44229600W9A420C1000000/

 

 当面「電子商取引」が対象のようだが、このデータ流通管理の枠組みを狭い意味に捉える関係者は少ないだろう。製造業も流通業も、果ては農業から医療まで、データ流通を利用しない産業・業種は存在しないのだから。

 

 G20に先立って、今年3月には産業界のサミットB20が東京で開催されている。とりまとめをした経団連のHPによると、B20東京サミット共同宣言が採択され、その政策提言項目の筆頭に「デジタル革新」が挙がっていて、データ活用のための政策枠組みや国際協力によるサイバーセキュリティ強化が謳われている。

 

http://www.keidanren.or.jp/policy/2019/020.html

 

 今年のダボス会議で安倍首相が話した、「Free Flows of DATA with TRUST」という言葉を実現するための議論が官民共同で進んでいるように見える。ただ昨年のG20でも激しい議論になったように、ここでも中国という高い壁が立ちはだかる。自由なデータ流通には全く応じない姿勢の中国を交えた議論で、今回のB20は一定の成果を上げたと関係者から聞いた。

 

 ただ僕は本当に中国が「ひとつのインターネット」に入ってくるとは思っていない。今でも人民解放軍100万人がネット上の書き込みを日夜監視し、不都合なものは消去するような国だ。だから日本政府の努力にもかかわらず、G20でも「Free Flows of DATA with TRUST」はすぐには成就しない。そこでステップを踏み、まず日米欧の三極でデータ流通圏を作ろうという動きになる。

 

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 この話はG20よりもG7の方が進めやすい。今回の外遊で安倍首相が最初に会ったのがG7の議長国フランスのマクロン大統領だったことは暗示的だ。もちろん日米欧といっても、GAFAへの対応や個人情報保護の考え方などデータ活用/関連産業へのスタンスは微妙に違う。それを乗り越えて(小異を捨てて)流通圏を構築できれば世界経済にとってはいいことだと思う。

 

 ただ、中国がそれを黙ってみているとも思えない。なにしろ「日米欧データ流通圏」となれば、それは中国包囲網に見えるだろうから。