Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

プロファイリングに関する提言

 プロファイリングという言葉は、よく近代的なミステリーで出てくる。ジェフリー・ディーヴァーの探偵リンカーン・ライムなどはその能力を極限まで高めた人。シャーロック・ホームズのように「軍人のような、医師のような・・・ワトソン君、もちろん軍医だ」というあいまいさの残る話ではなく、鑑識能力を駆使して被害者や犯人の人物像をあぶりだしていく。殺人現場でなくても人はいろいろな痕跡を残していく。リアル空間でも、サイバー空間でも。

 かつて米国の大規模小売店「ターゲット」が、顧客の購買履歴から、妊娠中の女性を割り出したというのが古典的なプロファイリング事件なのだそうだ。もちろんその店の目的は、パーソナライズド広告を彼女に送って妊娠関連商品を販促することである。昔から「呉服屋は火事になったら大福帳を最初に持ち出す」という。顧客データベースは店そのものより、在庫より大事なのだ。ただ「ターゲット」のケースを超えて、自分の商品を宣伝するだけでなく、病院やベビーシッターを世話したり、別業態まで巻き込んだ販促にしたら消費者は薄気味悪さを覚えるだろう。

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 今はもっと個人情報があふれているデジタル社会、GAFAと呼ばれる「巨大IT企業」ばかりが槍玉に揚がっているが、デジタル個人情報を集めている企業・団体はゴマンと存在する。デジタル・サービスを提供しその関係で市民のデータを集めている企業に対して規律ある活動をもとめるために、「パーソナルデータ+α研究会」という集団が提言を出している。この団体の主張を聞く機会があった。ポイントは、

 企業へ:コンプライアンス体制等の整備(社会的・倫理的責任に配慮した体制づくり)
 業界団体などへ:企業等の自主的な取り組みへの支援(ガイドライン作成や消費者と企業の間に立った調整)
 政府へ:民間主導の自主的な取り組みの尊重(企業・業界団体・認定個人情報保護団体らとの対話継続、看過できなくなった場合の立法措置)

https://aip.riken.jp/news/profiling190225/?lang=ja 

 インターネットは民間主導、政府は過度に介入しないというスタンスが守られているのは評価できる。この団体には有識者だけでなくデータを集めている企業も参加しているのだが、この文言にたどりつくまでにいろいろな意見の違いがあったろうと思われる。個人のデータが社会に役立つように使われて、その個人にも何らかのリターンがあるようなモデルを作らなくてはいけないのだが、その第一歩としていろいろな人たちが一堂に会して議論したということは意味がありますね。